最新記事

資源開発

北極圏の資源開発に野心、ロシアが「武装」砕氷船を進水

Russia Unveils 'Unique' Weaponized Icebreaker as It Eyes Arctic Oil and Gas

2019年10月29日(火)15時35分
ブレンダン・コール

ロシアの原子力潜水艦シビーリの進水式(2017年9月22日、サンクトペテルブルク) Anton Vaganov-REUTERS

<携行式対空ミサイルや巡航ミサイル「カリブル」、ヘリコプターの離着陸台も備えた砕氷船「イワン・パパーニン」の任務は>

10月中旬に極東で大規模な軍事演習を行ったばかりのロシアが、新たな砕氷船をお披露目した。北極圏の北方艦隊に配備される。

10月25日にサンクトペテルブルクのアドミラルティ造船所で進水式が行われた砕氷巡視船「イワン・パパーニン」は、排水量8500トン、全長およそ100メートル。ロシア海軍によれば、タグボート(曳船)や巡視船、砕氷船と調査船としての機能を兼ね備えている。

<参考記事>アメリカも抜いた?ロシア製最終兵器、最新の実力

国営タス通信によれば、イワン・パパーニンを建造した統一造船会社のビクトル・チェルコフ将官は次のように語った。「北方艦隊の安全を確保できるような船をつくりたかった。同時に科学調査も行える機能を持たせ、北極圏におけるロシアの国益を守れるようにもしたかった」

北極圏に眠る豊富な石油や天然ガスなどの資源を確保しようと狙うロシアにとって、北極圏で権益確保は戦略上の重要な目標だ。


駆逐艦並みの兵器システムを搭載

そのために、ソ連の著名な探検家イワン・パパ―ニンにちなんで命名されたこの砕氷巡視船には、携行式対空ミサイルや巡航ミサイル「カリブル」が搭載され、電子戦システムやヘリコプターの離着陸台も備わっている。厚さ約1.7メートルの氷を砕くことができ、就役は2022年か2023年となる見通しだ。

ガゼッタ紙の報道によれば、統一造船会社のゲオルギー・ポルタフチェンコ会長は、イワン・パパーニンは「無限の異なる任務」に対応でき、北極圏で「きわめて効率的に」作業を進められるように設計されていると豪語した。

<参考記事>北極開発でロシアは誰よりも先へ

米ナショナル・インテレスト誌によれば、ロシアは世界一多くの砕氷船を保有しており、その数は国と民間企業で40隻にのぼる。うち6隻が原子力砕氷船だ。同誌はイワン・パパーニンについて、「駆逐艦並みに」特化した兵器システムを備えている点が特徴だと指摘している。

【動画】世界最大級のロシアの原子力砕氷船ヤマル(ドローン撮影)


ユーラシア・デイリー・モニター紙は6月、「軍の砕氷船は北極圏の覇権争いにおけるロシアの切り札となるか」と題した記事を掲載。ロシアが2020年までに、「既存の脅威」に対して北極圏での安全保障を確保できる複数の部隊を配備する計画だとし、2024年にはイワン・パパーニンと同じ多目的の砕氷巡視船「ニコライ・ズボフ」を就役させる計画だと報じた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、高市首相の台湾発言撤回要求 国連総長に書簡

ワールド

MAGA派グリーン議員、来年1月の辞職表明 トラン

ワールド

アングル:動き出したECB次期執行部人事、多様性欠

ビジネス

米国株式市場=ダウ493ドル高、12月利下げ観測で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 2
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 5
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 9
    「裸同然」と批判も...レギンス注意でジム退館処分、…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 9
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中