最新記事

韓国事情

韓国で広がるユーチューブ「一人放送」、不買推進派も反対派も意見主張

2019年10月18日(金)16時00分
佐々木和義

韓国で、10人に4人が「一人放送」を実施中か計画中...... Kim Hong-Ji-REUTERS

<韓国でユーチューブ「一人放送」が拡大している。10人に4人が「一人放送」を行っているか計画中という......>

韓国で「一人放送」の人気が高まっている。個人で動画の撮影と編集を行い、ユーチューブで発信する手引き書がベストセラーとなり、関連機材の売上も大幅に伸びている。

オンラインショッピングモールGマーケットのアンケート調査で、10人に4人が現在一人放送を行っているか計画中と回答する一方、ユーチューバーへの課税が新たな課題として浮上してきた。

「一人放送」関連書籍はベストセラー

インターネット通販大手のインターパークが2019年1月から9月に販売した書籍を分析したところ、「一人放送」関連書籍が、前年同期と比べて82%増加していた。18年度のコンピュータ関連書籍のベストセラーはビジネスマン向けエクセル本だったが、今年は人気ユーチューバーが著した手引き書が1位となり、ベストセラー上位10冊のうち4冊を「一人放送」関連書籍が占めていた。購入層は30代が61%、20代が31%、10代が3%などとなっている。

韓国メディア・デザイン専門就職ポータルのMJフレックスが行ったアンケートで、10人に7人が退勤後の7時からユーチューブを視聴し、8割が一度見はじめると30分以上視聴と回答するなど、ユーチューブ視聴者が増加するなか、自ら発信する人の増加も著しい。カメラや音響、照明、撮影時にブレを軽減するジンバルなど動画用機器の製造販売を行うメーカーや販売会社が「一人放送」機材の開発と拡販に力を入れ、Gマーケットが集計した関連商材売上は、前年同期比11倍以上だ。

消費者も企業も意識が変わった

ユーチューブ人気が高まっている背景のひとつに消費者意識の変化がある。メーカーなど販売者が発信する情報は虚偽や誇張があると考え、第三者の情報を求める消費者が少なくないのだ。企業側は人気が高いパワーブロガーに対価を払って商品紹介を依頼してきたが、動画の方がより深く浸透する。ユーチューバーが商品紹介を発信し、登録者が増えると広告主からの依頼に繋がるのである。

そして、企業もユーチューブを活用する。韓国の小売店は認知度が高い"売れ筋"商品を販売する。販売者がコンビニエンスストア本部に数千万ウォンを払い込んで納入契約を締結したとしても、実際の販売商品は加盟店が決定するため、認知度の低い商品が店頭に並ぶことはない。そこで企業はユーチューブで発信し、通販サイトに誘導する手段を選ぶ。

政府の各部処もユーチューブ・チャンネルの運営を開始

政府や自治体もユーチューブに注目している。ソウル市は海外のインフルエンサー5人にグローバル広報大使を委嘱した。タイ、中国、米国、デンマーク、ベトナムのインフルエンサーで、5人のユーチューブ・チャンネルの登録者は合わせて1000万人を超えている。広報大使は観光スポット等を紹介する動画に出演し、それそれのユーチューブ・チャンネル等で公開する計画で、市は2億回以上の再生を期待している。

日本の省庁に相当する政府の各部処もユーチューブ・チャンネルの運営を開始した。文在寅大統領がユーチューブの重要性が高まっていると話したことを受けて取り組みをはじめたが、18部処のチャンネル登録者数は平均1万8000人で成人男女の0.04%にとどまっている。

雇用労働部・長官の動向


雇用労働部や環境部が発信した長官の動向を伝える動画はレスポンスがなく、教育部長官の動向を伝える動画のレスも教育部を批判する内容だった。各機関が民間ユーチューバーと合作し、人気を呼んだ動画もあるが、独自で企画した動画は人気がなく、効果がないと指摘する声が上がっている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中が閣僚級電話会談、貿易戦争緩和への取り組み協議

ワールド

米、台湾・南シナ海での衝突回避に同盟国に負担増要請

ビジネス

モルガンSも米利下げ予想、12月に0.25% 据え

ワールド

トランプ氏に「FIFA平和賞」、W杯抽選会で発表
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開きコーデ」にネット騒然
  • 4
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 1
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 2
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 6
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 9
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中