引渡条例撤回でも混乱収まらぬ香港 中国はなぜ手出しできないのか
香港の民主化を求めるデモが長期化し、暴力的な様相が濃くなる一方なのに対し、中国政府は強硬手段による介入を辞さない姿勢を明確に打ち出している。写真は香港の金融地区。7月撮影(2019年 ロイター/Tyrone Siu)
香港の民主化を求めるデモが長期化し、暴力的な様相が濃くなる一方なのに対し、中国政府は強硬手段による介入を辞さない姿勢を明確に打ち出している。このため、政治・経済面で香港の将来への不安が高まっている。
中国側が軍による介入に乗り出せば、「安定した国際金融センター」「世界から中国本土への投資の玄関口」といった香港の地位は深刻なダメージを受けかねない。中国本土ではどの都市も、たとえ上海でさえ、近い将来に香港の役割を果たすことはできないだろう。
そこで中国本土が香港から受けている恩恵や、現在の枠組みが崩れた場合のリスクなどをまとめた。
中国はなぜ今のままの香港が必要なのか
中国が依然として厳格な資本規制を実施し、しばしば金融市場や銀行システムに介入するのに対して、香港は世界有数の開放的な市場であり、株式と債券の資金調達の場としても最大級だ。
香港の経済規模自体は中国本土の2.7%程度と、1997年の中国への返還時の18.4%から低下したかもしれない。しかし世界水準の金融システムと法体系があるからこそ、経済規模以上の存在感を放っている。
そしてこうした仕組みを運営できるのは、「一国二制度」という独特の統治制度のおかげだ。この制度の下で、香港には中国本土にない表現の自由や独立的な司法などの自由が保障され、それによって、中国政府とは別個に貿易や投資に関する協議ができる国際的な地位を手にしている。例えば、米国が中国製品に課している関税は、香港には適用されない。また外国投資家は、共産党支配を支える中国本土の法体系よりも、香港の法体系に信頼を置いている。