「国へ帰れ」の次は「送り返せ」 エスカレートするトランプの人種差別とささやかな抵抗
Restaurant near Trump Rally Donates 100% of Proceeds to Help Immigrants
最近のトランプの選挙集会では、聴衆から不気味な「送り返せ」コールが沸き上がった(ノースカロライナ州グリーンビル、7月17日) Kevin Lamarque-REUTERS
<トランプのマイノリティー攻撃に支持者が呼応し「送り返せ」コールを始めた火曜の選挙集会は、現代では最も醜い人種差別の光景だった、と専門家は言う>
ドナルド・トランプ米大統領は7月17日、2020年大統領選に向けた選挙集会をノースカロライナ州で開催した。トランプが元ソマリア難民でイスラム教徒の民主党下院議員イルハン・オマルを攻撃すると、支持者たちは間髪を入れず「(彼女を)送り返せ」の大合唱となった。
トランプは、ほんの数日前にもオマルらに「(自分の)国に帰れ」とツイートして米下院の非難決議を食らったばかり。
トランプの人種差別発言に怖さを感じて行動を起こす市民もいる。集会が開催された同州グリーンビルのレストランオーナーは、当日の売り上げを移民支援のために全額寄付することを明らかにした。
レストラン「ザ・スカラリー」のオーナー、マシュー・スカリーは、トランプの集会当日、レストランの窓に「本日の売り上げは全額、メキシコ国境の移民危機の解決と米社会の多様化を推進する団体『アメリカ移民協議会』に寄付します」と張り紙をし、その写真をフェイスブックに投稿した。
「トランプの人種差別に黙っていられなくなった」と、スカリーは本誌の取材に語った。「社会に憎しみと分断をもたらしている......今こそ前向きなメッセージを広める時だと考えた」
直接のきっかけは、オマルを始めとする民主党の「進歩的」な女性下院議員4人に対し、トランプが「犯罪まみれの出身国に帰れ」とツイートしたこと。その時点では、まさかそれ以上の攻撃をするとは思っていなかったという。
<参考記事>トランプの「国に帰れ」発言に全米が人種差別反対コール
<参考記事>ムスリム女性議員の殺害を呼び掛けるようなヘイト投稿をしてもトランプのツイッターはなぜ止められないのか
人種差別に国内外から非難
17日の集会でトランプは、非白人の4人の下院議員を、あらためて「憎悪に満ちた過激派」と攻撃。とくに、4人のうち8歳のときにソマリアから難民としてアメリカに来たオマルを「悪意ある反ユダヤ主義的な発言を繰り返している」と批判すると、会場の支持者は「送り返せ、送り返せ(send her back, send her back)」の大合唱になった(トランプは今、あれは支持者が言ったことだと責任逃れをしている)
米議会議員や世界各国の有識者が、この集会で繰り広げられたあからさまな人種差別を非難している。アメリカの作家で公民権活動家のショウン・キングは、「米現代政治史の中で最も酷い人種差別の1つ」とツイッターでコメントした。
レストランオーナーのスカリーは、集会で何が起こったかを知って「とても残念だ」と言った。「『国に帰れ』とか『送り返せ』とか、アメリカにとって本当に恥ずべきことで、悲しく、憤りを覚える」
3人の子どもの父親であるスカリーは、不法移民の子どもたちがメキシコ国境で拘束されことも気がかりだと言う。「国境の子供たちがどんなトラウマを受けるか......そして将来、その子供たちがトラウマを乗り越えて人生で成功できるか、それはとても困難なことだ」と、話した。
窓に張り出したメッセージの効果で、17日にはレストランに約500人の来客があり、5800ドル以上の売り上げがあった。スカリーは、その全額を移民支援団体「アメリカ移民協議会」に寄付する。
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