最新記事

中国

中国が宇宙ステーションを国際開放、東京大学ほか9件の宇宙実験を受け入れ

2019年6月17日(月)15時30分
秋山文野

中国宇宙ステーション(CSS)の完成イメージ。コアモジュールと実験モジュールから構成され、最大6名の宇宙飛行士が滞在できる。出典:China Space Station and its Resources for International Cooperationハンドブック

<中国は「中国宇宙ステーション(China Space Station)」を2022年ごろの完成を目指しているが、日本の東京大学を始め17カ国から募集した9件の宇宙実験を受け入れると発表した>

2019年6月12日、中国は独自に構築する「中国宇宙ステーション(CSS:China Space Station)」で日本の東京大学を始め17カ国から募集した9件の宇宙実験を受け入れると発表した。ロシアや日本などすでに宇宙技術を持っている国だけでなく、ケニア、メキシコ、ペルーなど宇宙新興国の参加を受け入れ、宇宙創薬、天文学、生命科学、微小重力実験、地球科学、宇宙技術など宇宙ステーションを使った実験を行う。平和利用目的の宇宙ステーションを利用する機会を提供することで、宇宙大国としての技術力と地位を示す目的があると考えられる。

27カ国から42件の実験計画の応募があった

CSSは、中国が2022年ごろに完成を目指す有人宇宙ステーション。宇宙飛行士が滞在する居住施設、宇宙実験室、有人往還機と貨物輸送機から構成され、長征2号(CZ-2F)、長征7号(CZ-7)、長征5号(CZ-5B)ロケットでCSSモジュールや宇宙飛行士、貨物を打ち上げる。コアモジュール(CM)、実験モジュール1(EM I)、実験モジュール2(EM II)の3施設を組み合わせ、軌道上で10年間活動させる予定だ。3名から最大6名の宇宙飛行士が滞在できる。

akiyama0617b.jpg

2013年に打ち上げられた長征2号ロケット。CSS計画の中では、神舟宇宙船の打ち上げを担う。Credit: China National Space Administration

中国宇宙ステーションに搭載される実験ラックの情報は2018年春に公開されており、国連宇宙部(UNOOSA)と共同でCSSを利用する実験計画を各国から募集していた。6月12日の発表によれば、27カ国から42件の実験計画の応募があったという。最終的に、17カ国23機関による提案が採択された。採択された実験は以下の9件となる。

1.POLAR-2:スイス、ポーランド、ドイツ、中国共同によるガンマ線バースト観測実験
2.SING:インド、ロシア共同による星雲ガス観測実験
3.微小重力下における部分的混合流体の挙動実験:インド、ベルギー共同による流体の挙動実験
4.FIAVAW:中国、日本(東京大学)による、航空機やロケットエンジンにおける燃焼の安定性の研究
5.Tumours in Space:ノルウェー、国際宇宙大学、オランダ、ベルギーによる宇宙放射線の癌への影響の研究
6.病原菌のバイオフィルム形成に対する微小重力影響の実験:ペルー、スペイン共同による、病原菌のバイオフィルム形成に対する微小重力の影響を調べる実験
7.中間赤外カメラによる地球観測:メキシコによる中間赤外カメラでの地球観測と3Uキューブサット(超小型衛星)への応用
8.宇宙用多接合ガリウム砒素太陽電池セルの開発:サウジアラビアによる宇宙用高効率太陽電池セルの開発
9.BARIDI SANA:イタリア、ケニア共同による宇宙用冷却システムの開発

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=S&P・ナスダック最高値更新、貿易交

ワールド

G7外相、イスラエル・イラン停戦支持 核合意再交渉

ワールド

マスク氏、トランプ氏の歳出法案を再度非難 「新政党

ビジネス

NY外為市場=ドル対ユーロで約4年ぶり安値、米財政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 2
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とんでもないモノ」に仰天
  • 3
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。2位は「身を乗り出す」。では、1位は?
  • 4
    「パイロットとCAが...」暴露動画が示した「機内での…
  • 5
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 6
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 7
    ワニに襲われ女性が死亡...カヌー転覆後に水中へ引き…
  • 8
    飛行機のトイレに入った女性に、乗客みんなが「一斉…
  • 9
    自撮り動画を見て、体の一部に「不自然な変形」を発…
  • 10
    顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 5
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 8
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 9
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 10
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中