最新記事

韓国

文在寅肝いりの現代自動車「低賃金」工場は、韓国の雇用を変えられるか?

2019年4月23日(火)10時40分

貧困都市

現代自の新工場では、年間3500万ウォン(約345万円)の給与が支払われる計画だ。これは現代自の現職労働者が稼いでいる9200万ウォンの3分の1強にすぎないが、光州市のサラリーマンの平均3300万ウォンを上回っている。

光州は、起亜の国内最大の生産拠点を抱え、南東部の蔚山に次ぐ国内第2位の自動車生産都市として、製造業生産高の40%以上を自動車セクターによって生み出している。

現代自による生産拠点の移転に伴い衰退してきた蔚山と同様に、起亜の生産台数が昨年、過去8年で最低水準に落ち込んだことにより、光州の先行きも暗くなってきた。

現在、韓国大都市圏の中で光州は2番目に貧しい都市となっており、韓国労働省のデータによれば、2017年の光州市における平均月給は全国平均よりも約13%低かった。

大学で経営管理を学んだキム・ジェスンさん(32)は、予定されている新工場でのブルーカラー職に応募するつもりだと話す。

「新工場の給与は、それでも平均的な労働者の賃金より高い。その意味では悪い仕事ではない。いい仕事だ」。先日市役所で開始された就職フェアの会場で、キムさんはこう話した。

光州でロイターが取材した他の求職者も、同市における若年労働者の失業率が高いことを考えれば、新工場での仕事はやはり気になるという。

法律を専攻したゴー・チャンフンさん(27)は、「市内には質の高い雇用があまり多くない。最近の不景気を考えれば、3500万ウォンの給料がもらえるなら御の字だ」と話す。

ドイツの前例はすでに閉鎖

元労組リーダーのパク氏は、2014年に低賃金工場を最初に提案。その後は起亜を休職して市役所でフルタイムの仕事に就いている。

パク氏によれば、このアイデアは、現在では閉鎖されている独自動車大手フォルクスワーゲンの低コスト部門「オート5000」から借用したものだという。これはドイツからの雇用流出を防ごうと2001年に設立されたものだ。フォルクスワーゲンが自社の強力かつ高賃金の組合労働者から賃金面での妥協を勝ち取ったことにより、同プロジェクトは2009年に終了した。

光州の新工場では、2021年以降、ガソリンエンジン搭載の小型スポーツ多目的車(SUV)を年間10万台生産する予定だ。

光州市では、将来的にはこの工場で電気自動車(EV)を生産したいと希望しているが、現代自の賛同はまだ得られていない。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国人民銀、期間7日のリバースレポ金利据え置き 金

ワールド

EUのエネルギー輸入廃止加速計画の影響ない=ロシア

ワールド

米、IMFナンバー2に財務省のカッツ首席補佐官を推

ビジネス

ミランFRB理事の反対票、注目集めるもFOMC結果
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中