最新記事

韓国事情

韓国の日本大使館、建て替えが進まず空き地になったまま4年が経った理由

2019年4月17日(水)18時00分
佐々木和義

慰安婦問題が浮上した1992年の宮澤喜一首相(当時)の渡韓を機にはじまった水曜集会は現在まで続き、2011年には慰安婦像が建てられた。日本大使館前では反日デモや集会が頻繁に行われ、領事部はことあるごとに大使館周辺に近づかないよう邦人に呼びかけている。

在韓邦人等が利用するのは領事部と広報文化院で、一般市民が本館を訪れることはないが、新しい大使館が完工して領事部も同居するようになると、領事部を訪れる邦人等の安全確保が新たな課題となる。

空き地の前に集結している反日団体

建て替えに伴って日本大使館は敷地から近い17階建てのツインツリータワーに移転し、領事部も同じ建物内に引っ越したが、慰安婦像はそのままになっている。

現在、日本大使館が入居するビル前の歩道は狭く、交通量が多い道路を挟んだ向かい側は景福宮で、慰安婦像の設置や集会を行うスペースはない。一般企業も入居しており、強行すれば観光客や市民から非難の声が上がりかねない。反日団体は塀に囲まれた空き地に向かう慰安婦像を囲んで気勢をあげ、デモ隊は空き地の前に集結しているのが現在の姿である。

4_IGP3973.jpg

日本大使館が入居するツインツリータワー 撮影:佐々木和義

韓国には米国や中国への不満をもつ人もいるが、大使館前でのデモや集会が皆無に近い理由は物理的なスペースがないからだ。反米団体が米軍車両事故で犠牲になった少女の記念碑を米国大使館近くに設置したことがあるが、歩行に支障があるとの理由で撤去されている。

日本大使館前の建物は国税庁や聯合ニュースなどで、一般市民がデモの影響を受けることはない。いっぽう米国大使館は市民や観光客が多い光化門広場に面し、中国大使館も外国人観光客で賑わう明洞にある。デモや集会を強行すると観光客や市民から反発が起きかねない。

日本大使館の敷地は日本政府が保有しているので、建築許可の再申請は可能だが、慰安婦像の撤去か、あるいは移転も選択肢になり、韓国政府の対応が注目される。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

プーチン大統領、北朝鮮の金総書記に新年のメッセージ

ワールド

焦点:ロシア防衛企業の苦悩、経営者が赤の広場で焼身

ワールド

北朝鮮の金総書記、24日に長距離ミサイルの試射を監

ワールド

ホンジュラス大統領選、トランプ氏支持のアスフラ氏が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 10
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中