韓国の日本大使館、建て替えが進まず空き地になったまま4年が経った理由
慰安婦問題が浮上した1992年の宮澤喜一首相(当時)の渡韓を機にはじまった水曜集会は現在まで続き、2011年には慰安婦像が建てられた。日本大使館前では反日デモや集会が頻繁に行われ、領事部はことあるごとに大使館周辺に近づかないよう邦人に呼びかけている。
在韓邦人等が利用するのは領事部と広報文化院で、一般市民が本館を訪れることはないが、新しい大使館が完工して領事部も同居するようになると、領事部を訪れる邦人等の安全確保が新たな課題となる。
空き地の前に集結している反日団体
建て替えに伴って日本大使館は敷地から近い17階建てのツインツリータワーに移転し、領事部も同じ建物内に引っ越したが、慰安婦像はそのままになっている。
現在、日本大使館が入居するビル前の歩道は狭く、交通量が多い道路を挟んだ向かい側は景福宮で、慰安婦像の設置や集会を行うスペースはない。一般企業も入居しており、強行すれば観光客や市民から非難の声が上がりかねない。反日団体は塀に囲まれた空き地に向かう慰安婦像を囲んで気勢をあげ、デモ隊は空き地の前に集結しているのが現在の姿である。
韓国には米国や中国への不満をもつ人もいるが、大使館前でのデモや集会が皆無に近い理由は物理的なスペースがないからだ。反米団体が米軍車両事故で犠牲になった少女の記念碑を米国大使館近くに設置したことがあるが、歩行に支障があるとの理由で撤去されている。
日本大使館前の建物は国税庁や聯合ニュースなどで、一般市民がデモの影響を受けることはない。いっぽう米国大使館は市民や観光客が多い光化門広場に面し、中国大使館も外国人観光客で賑わう明洞にある。デモや集会を強行すると観光客や市民から反発が起きかねない。
日本大使館の敷地は日本政府が保有しているので、建築許可の再申請は可能だが、慰安婦像の撤去か、あるいは移転も選択肢になり、韓国政府の対応が注目される。