最新記事

米韓関係

米国警備艦が北朝鮮の「瀬取り」監視で異例の韓国入り 韓国への警告の意図も?

2019年4月2日(火)15時30分
内村コースケ

アメリカ沿岸警備隊の大型警備艦「バーソルフ」 United States Department of Homeland Security-wikipedia

<今月11日に開かれる米韓首脳会談を前に、アメリカの沿岸警備隊の大型警備艦「バーソルフ」(バーソルフ級カッター)が日本の佐世保港から韓国入りし、北朝鮮による「瀬取り」の取り締まりに乗り出した。トランプ政権内では、親北的な姿勢を見せる韓国の文在寅政権に対する苛立ちが隠しきれなくなっているとも報じられているが、異例の警備艦派遣は、北朝鮮のみならず、同盟国韓国への警告とも受け取れる動きだ>

佐世保から済州島へ移動

「バーソルフ」は、米沿岸警備隊の駆逐艦クラスの主力大型艦。同艦は今年1月20日に母港のカリフォルニア州アラメダ港を出港し、西太平洋で警備や米海軍艦のサポート任務を行った後、東シナ海に進出して北朝鮮による「瀬取り」の監視任務に就いた。3月3日に長崎県の米海軍佐世保基地に入港し、26日には韓国・済州島に転進した。韓国メディアの報道によれば、28日に同島沖の公海上で韓国海警(沿岸警備隊)の大型警備艦と合同訓練を行った。「バーソルフ」は、引き続き朝鮮半島周辺に留まり、瀬取りの監視任務に就くとみられる。

この訓練は、表向きは以前から予定していた麻薬取引を行う船舶の合同検問検査訓練ということになっているが、韓国・朝鮮日報などは、実態は北朝鮮の石油・石炭などの瀬取りに対する牽制を兼ねた訓練だと指摘している。瀬取りとは、洋上で船から船へ積荷を移し替える行為のことで、現代では主に、覚醒剤の密輸などで当局の監視の目を逃れる手段として用いられる。

北朝鮮は、国連安保理による経済制裁により禁輸措置が取られている石油をこの瀬取りによって手に入れ、主要輸出品の石炭を輸出して外貨獲得の手段にしていると言われる。米政府は、北朝鮮は昨年、認められている量の7倍半もの石油製品を輸入したようだと指摘。米国務省と沿岸警備隊、米財務省外国資産管理局(OFAC)がまとめた最新情報によれば、北朝鮮は外国船籍の石油タンカーからの瀬取りによって少なくとも263回石油製品を受け取ったという(ブルームバーグ)。

韓国も「瀬取り」に関与?

北朝鮮の瀬取りには、中国やロシアだけでなく、同盟国として制裁に積極的に協力すべき韓国の関与も疑われている。そのため、韓国メディアには、「バーソルフ」派遣は、北朝鮮よりもむしろ韓国に対する警告シグナルだと捉える論調も出ている。

韓国の瀬取りへの関与を疑わせる事例は少なくない。たとえば、昨年5月には、東シナ海東方沖の洋上で、韓国船籍と見られるタンカーが、北朝鮮船籍のタンカーに横付けしているのを海上自衛隊機が確認。韓国の輸入業者が、禁輸措置が取られている北朝鮮産の石炭をロシア産と偽って違法に輸入した件も明るみになった。米財務省外国資産管理局(OFAC)が先月22日に発表した瀬取りを行った疑いがある船舶の最新のリストには、初めて韓国船籍の船も挙げられた。

日韓関係を決定的に悪化させた昨年末の韓国海軍駆逐艦による海上自衛隊哨戒機に対する「レーダー照射事件」についても、瀬取りとの関係を指摘する政府関係者や識者もいる。韓国船が瀬取りを支援している現場を押さえられそうになったため、海自機をレーダー照射によって追い払おうとしたのではないかという見方だ。海自機は、救難信号を出していたとされる北朝鮮の漁船を韓国の小型ボートや警備艇が取り囲んでいる状況を確認している。ちなみに、日本側は北朝鮮船の救難信号をキャッチしていない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

香港証券監督当局、IPO申請の「重大な不備」指摘 

ビジネス

ディズニーCEO、任期満了前に退任の意向 WSJ報

ビジネス

物価対策は焦眉の急、次の利上げ「タイミング逃さず」

ワールド

トランプ氏、「キューバは米との取引望む」 経済窮状
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 2
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」から生まれる
  • 3
    世界初、太陽光だけで走る完全自己充電バイク...イタリア建築家が生んだ次世代モビリティ「ソラリス」
  • 4
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 5
    中国がちらつかせる「琉球カード」の真意
  • 6
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    【銘柄】「大戸屋」「木曽路」も株価が上がる...外食…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 2
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 3
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界でも過去最大規模
  • 4
    180万トンの「リチウムごみ」を資源に...EV電池の「…
  • 5
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から…
  • 6
    一人っ子政策後も止まらない人口減少...中国少子化は…
  • 7
    スペースXの宇宙飛行士の帰還が健康問題で前倒しに..…
  • 8
    ロシア軍の前線で「弾よけ」にされるアフリカ人...兵…
  • 9
    町長を「バズーカで攻撃」フィリピンで暗殺未遂、大…
  • 10
    秋田県は生徒の学力が全国トップクラスなのに、1キロ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 5
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中