土星最大の衛星タイタンで深さ100メートル超の湖が発見される
タイタンの炭化水素の海が太陽光を反射している近赤外線画像 Credits: NASA/JPL-Caltech/Univ. Arizona/Univ. Idaho
<土星探査機カッシーニが取得したデータを解析したところ、メタンを主成分とする深さ100メートル超の湖が発見された>
土星の第六惑星で最大の衛星でもあるタイタンは、太陽系において、地球を除き、地表で安定した液体の存在が確認されている唯一の天体だ。タイタンでは、平均マイナス180度という低温ゆえ、メタンやエタンなどの炭化水素が液体の状態で地表に安定的に存在している。
そしてこのほど、地球で水が氷、水、水蒸気の3つの形態の間で変化しながら絶えず循環しているように、タイタンでも、メタンとエタンの循環が起こっていることが明らかとなった。
メタンを主成分とする深さ100メートル超の湖を発見
アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)によって開発された土星探査機カッシーニは、土星系に到達した2004年から2017年のミッション終了まで、レーダー探知機を用い、160平方キロメートルにわたってタイタンの地表にある湖や海をマッピングした。
米カリフォルニア工科大学のマルコ・マストロジュゼッペ研究員らの研究チームは、カッシーニが最後にタイタン近傍を通過した2017年4月22日に取得したデータを解析し、タイタンの北半球において、メタンを主成分とする深さ100メートル超の湖を発見した。
降り注いだ液体メタンの雨により、地球のカルスト湖と似たプロセスで、何千年にもわたって形成されたものとみられている。研究チームは、2019年4月15日、この研究成果を学術雑誌「ネイチャーアストロノミー」で公開している。
季節で満ちたり干上がったりする池
また「ネイチャーアストロノミー」では、同日、タイタンの北半球西部で発見された浅い小さな池に関する研究論文も公開している。29.5年周期のタイタンでは季節とともにメタンの蒸発量や降水量が変化すると考えられてきたが、タイタンの北半球ではこの見方を裏付ける現象が確認されていなかった。
米ジョンホプキンス大学応用物理学研究所のシャノン・マッケンジー博士らの研究チームは、この研究論文において、タイタンの北半球西部で冬期に観測された3カ所の小さな池が7年後の春分までに消滅していたことを明らかにした。
池にあった液体は、冬から春までの間に蒸発したか、地面に流入したものとみられている。研究チームでは「池の位置や大きさ、寿命が、堆積物の形成、季節の天候、気候の進化、さらには居住性にも影響を与えているのではないか」と考察している。
これら2つの研究成果は、タイタンの湖の性質や炭化水素の循環のメカニズムを解き明かすものとして評価されている。