最新記事

中国

全人代「中国の国防費」は脅威か──狙いは台湾統一

2019年3月13日(水)13時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

調べてみると、ストックホルム国際平和研究所の2018年データ(2017年の集計)によれば、たしかにアメリカ1ヵ国で6100億ドルで、アメリカを除く世界トップ10の内の残り9ヵ国の国防費総計は6615ドルと、ほぼ6100億ドルに近いと言えば近い。

法外な昨年のアメリカ国防予算

解説委員は続けて、アメリカの「2019会計年度(2018年10月~2019年9月)の国防予算」が如何に法外なほど高額なものであるかに関して解説を始めた。

「アメリカの国防費は7160億ドルで、過去9年で最大規模になりました。それに対して中国の国防予算は、わずか1776億ドルに過ぎません。アメリカの4分の1でしかない。だというのに、特に日本などは何を騒ぐのでしょうか」と強調した(7160億ドルは約78兆円)。

たしかに3月4日、全人代開幕前に全人代の張業遂報道官が記者会見を行なった時、ブルームバーグの記者が「中国の国防費が拡大を続けている。アジア太平洋の一部の国は、これが脅威になるとし懸念している。それから日本などの国は、中国の軍事費の透明度について懸念を示した」と切り出しながら質問している。日本語に翻訳されたページ<全人代報道官、中国の軍事費に関する日本などの懸念にコメント>があるので、こちらでご確認いただきたい。

なぜブルームバーグの記者が日本に関する例を挙げながら質問したのか、やや奇異にも思うが、アメリカの新聞記者にも、中国の軍事費に対する日本の世論が際立って見えたのだろう。

解説委員は続けた。

「おまけにアメリカは、『一つの中国』という大原則を侵して、国防権限法に台湾への武器供与を強化する方針を盛り込んでいる。これは米中国交を正常化したときの約束に違反します!」と語気を荒げた。

建国70周年記念と台湾統一

中国の最大の関心事は、まさにここにある。

特に今年は中国(中華人民共和国)建国70周年記念だ。

1月6日付のコラム<「平和統一」か「武力統一」か:習近平「台湾同胞に告ぐ書」40周年記念講話>で書いたように、習近平国家主席は今年1月2日、「台湾同胞に告ぐ書」発表40周年記念で講話し、2020年の台湾総統選に向けて「一国二制度」による平和統一を選択しない限り、武力統一もあり得ると脅した。武力統一というのは胡錦濤政権時代の2005年に全人代で採決された「反国家分裂法」を指す。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IBM、コンフルエントを110億ドルで買収 AI需

ワールド

EU9カ国、「欧州製品の優先採用」に慎重姿勢 加盟

ビジネス

米ネクステラ、グーグルやメタと提携強化 電力需要増

ワールド

英仏独首脳、ゼレンスキー氏と会談 「重要局面」での
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 7
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    死刑は「やむを得ない」と言う人は、おそらく本当の…
  • 10
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中