最新記事

中国

G7切り崩す習近平「古代シルクロードの両端は中国とイタリア」

2019年3月26日(火)15時10分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

それに対して習近平は「友誼は偶然の選択ではなく、志同道合(志が同じで、進む道が一致する)の結果である」という、イタリアの小説家アルベルト・モラビアの明言を引用して答えた。

G7の一角を切り崩す習近平

こうしてG7の一角を切り崩す、正当にして遠大なる理屈が創りあげられたのである。

中国はそもそもG8の時代から、その存在は「虚構に過ぎない」として強く批判し、特にロシアがG8 から外されてG7となった後は、まるで恨みでも持っているかのように「先進7ヵ国」の集まりを蔑視してきた。

したがって「一帯一路」とペアで動いているAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立に当たっても、まずはイギリスを巧みに誘導して参加させ、一気に雪崩を打ったように創設メンバー国にフランス、ドイツ、イタリアなどを加盟させることに成功している(2015年)。AIIBに関しては、G7の結束はこの時点で崩壊している。

今はアメリカが対中強硬策で頑張っているので、容易にG7が「一帯一路」に向かって、AIIB創設時のような動きをする可能性は低いだろうが、日本が第三国で「一帯一路」に協力すると表明したことは、「フランスもまた第三国協力で」という不確定要素をもたらしている。この度の訪仏で、習近平はマクロン大統領に、そのように話しており、CCTVでは「日本モデルを基準にして」とさえ解説した。

昨日(25日)、安倍首相は参院予算委員会で、「一帯一路に日本が協力するには、4条件(適正融資による対象国の財政健全性やプロジェクトの開放性、透明性、経済性)を満たす必要があり、4条件を満たせば協力していこうということであって、全面的に賛成ではない」旨のことを答弁したが、もう遅い。今さらそのようなことを国内で言っても、昨年10月26日に習近平と会談したときには、そのようには言っていない。

これに関しては3月11日付けのコラム<全人代「日本の一帯一路協力」で欧州への5G 効果も狙う>で述べた通りだ。

5G選択に揺れるヨーロッパ諸国

拙著『「中国製造2025」の衝撃 習近平はいま何を狙っているか』では、「一帯一路」は空中シルクロード聯盟とともに、宇宙から「一帯一路」の内の発展途上国に代わって中国が人工衛星を打ち上げGPS管理もしてあげるという、宇宙の実効支配を狙った「一帯一路一空天」(天は宇宙)にまで発展していると述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪3月住宅価格は過去最高、4年ぶり利下げ受け=コア

ビジネス

アーム設計のデータセンター用CPU、年末にシェア5

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極

ワールド

ガザの砂地から救助隊15人の遺体回収、国連がイスラ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中