最新記事

日本社会

年功賃金、男女格差......収入カーブから見える日本社会の歪み

2019年2月20日(水)13時30分
舞田敏彦(教育社会学者)

このやり方で、5歳刻みの年齢層ごとに年収相対値の中央値を算出した。これらをつなげば、年収の年齢カーブになる。国際比較も可能だ。日本、韓国、アメリカ、スウェーデンの4カ国のカーブを描くと<図2>のようになる。

maita190220-chart03.jpg

日本は、<図1>の国内統計のカーブと似ている。ジェンダー差が大きく、男性は60歳を過ぎると急落する。性別・年齢による役割規範(拘束)がきわめて強い社会だ。韓国もこのタイプだが、日本ほどではない。

これに対してアメリカ、スウェーデンは違っている。ジェンダー差が小さく、女性のカーブが日本のように右下がりになることはない。収入の伸びが30代から頭打ちになるのも興味深い。日本のような機械的な年功賃金ではない。「何であるか」よりも「何ができるか」、簡単に言えば実力主義だ。

これは今から7年前のデータだが、日本は今後これではやっていけない。労働力不足の時代に、女性・高齢者の就業が促されるところだ。

賃金格差の是正も求められる。日本は収入のジェンダー差がはなはだ大きいが、「女性はパートが多いからだろう」と思われるかもしれない。事実、配偶者控除のライン(年収150万円以下)を意識した働き方をしている女性も多い。しかし、労働時間を考慮した時間給で見てもジェンダー差がある。

外国人労働者の受け入れ拡充が決まったが、上記のグラフを見ると、できることは他にありそうだ。働き手は、伝統的な意味での生産年齢層の男性だけではない。まずもってなすべきは、履歴書から性別・年齢の記入欄を無くすことではないか。

<資料:総務省『就業構造基本調査』(2017年)
    OECD「PIAAC 2012」

ニューズウィーク日本版 トランプvsイラン
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月8日号(7月1日発売)は「トランプvsイラン」特集。「平和主義者」の大統領がなぜ? イラン核施設への攻撃で中東と世界はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ、6月の英販売台数は前年比12%増=調査

ワールド

豪家計支出、5月は前月比+0.9% 消費回復

ワールド

常に必要な連絡体制を保持し協議進める=参院選中の日

ワールド

中国、太平洋島しょ地域で基地建設望まず 在フィジー
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索…
  • 7
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 8
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 9
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 10
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 4
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギ…
  • 5
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 6
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 7
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 8
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 9
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 10
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 7
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 8
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 9
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 10
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中