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サイエンス都市を日光の熱から守る古代エジプトの青
The Egyptian Blue Effect
古代エジプトの神々や王族を描くのに使われた色素のエジプト青が地球温暖化防止に役立つかもしれない Freeartist/iStock.
<人類最古の人工色素と言われる「エジプシャンブルー」に隠されていた熱い日光をはじき返す不思議なパワー>
エジプシャンブルー(エジプト青)という色素をご存じだろうか。古代エジプト人が作り出したもので、世界最古の人工色素とも言われる。この青い色素が数千年の時を経て、現代社会でも大いに役に立つと期待できることが最新の研究で明らかになった。
米ローレンス・バークレー国立研究所の研究チームが学術誌ジャーナル・オブ・アプライド・フィジックスで発表した論文によれば、エジプト青に光を当てたときに放たれる蛍光(光や電磁波の照射を受けた際に物体から発せられる光のこと)は、従来考えられていたより10倍も強いことが判明した。
つまり、この色素の入った塗料を屋上や外壁面に塗れば、強い日差しを浴びる夏でも建物が熱くなりにくくなってエアコンの使用を減らせるかもしれない――研究チームはそんな期待を抱いている。
エジプト青の材料はケイ酸銅カルシウムという物質だ。古代エジプトでは神々や王族を描く際に使われ、ローマ人はこの色をカエルレウムと呼んだ。だが古代ローマの時代が終わると使われなくなり、19世紀になるまで製法も忘れ去られていた。
ローレンス・バークレーの研究チームはエジプト青と、比較のために他の色で塗ったサンプルを日光に当てた。そしてその後の温度を計測し、放たれる蛍光のフォトン(光子、光の粒子)の量を計算したという。
これにより、建物の温度上昇を防ぐ効果があるのはどんな色かについて新たな知見が得られた。建物を涼しく保つために最もよく使われるのは、日光を反射する性質を持つ白の塗料や壁材だ。だがデザイン上の理由から、白以外の色を使いたい場合もある。これまでにローレンス・バークレーが行った研究では、蛍光ルビーレッドが白の代替として効果的なことが分かっていた。そして今回、エジプト青も新たにリストに加わったわけだ。
また、エジプト青の発する蛍光は発電にも利用できるかもしれない。先行研究において、エジプト青は可視光を吸収して近赤外線を発することが分かっている。エジプト青で染めた窓の縁に太陽電池パネルを設置すれば、窓で反射された大量の近赤外線のエネルギーを電気に変えられる可能性がある。
見た目が涼しげなだけでなく実際に建物を涼しく保ち、しかもエネルギーを生み出す。エジプト青は悠久の時を経て、地球温暖化の防止に一役買うかもしれない。
<本誌2018年11月06日号掲載>
※11月6日号は「記者殺害事件 サウジ、血の代償」特集。世界を震撼させたジャーナリスト惨殺事件――。「改革」の仮面に隠されたムハンマド皇太子の冷酷すぎる素顔とは? 本誌独占ジャマル・カショギ殺害直前インタビューも掲載。
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