最新記事

中国で2020年までに「人工の月」を打ち上げる計画が明らかに

2018年10月19日(金)17時10分
松岡由希子

中国が「人工の月」を打ち上げる… Laoshi-iStock

<人工衛星や打ち上げロケットなどを開発・製造する中国の国営企業が、2020年までに「人工の月」となる人工衛星を打ち上げる構想を発表した>

太陽光を反射させる人工衛星

中国南西部の四川省成都市で、宇宙から地表を照らす、いわば"人工の月"のような人工衛星の打ち上げ計画が明らかとなった。

中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」によると、人工衛星や打ち上げロケットなどを開発・製造する国営企業「中国航天科技集団公司(CASC)」の吴燕生会長は、2018年10月10日、成都市で開催された「全国起業・イノベーション活動ウィーク」において、「2020年までに"人工の月"となる人工衛星を打ち上げる」と発表した。

衛星の表面にコーティングした反射膜に太陽光を反射させて月の8倍の明るさで地表を照らし、街路灯の代わりに活用するというものだ。直径10キロメートルから80キロメートルのエリアを照らすことができ、その範囲は地上で制御できる仕組みとなっている。

この"人工の月"は、「上空に巨大な鏡のネックレスをかけて太陽光を反射させ、パリの街を一年中照らす」というフランス人アーティストのアイデアから着想を得、数年にわたって技術開発がすすめられてきた。吴会長は「ようやく技術が成熟した」と自信を示す。

動植物の概日リズムへの影響は?

しかしながら、宇宙からの反射光が動植物の概日リズムに悪影響をもたらしたり、地球の大気を観測する天文観測システムの障害になるのではないかとの指摘もある。これらの懸念に対して、ハルビン工業大学のカン・ウェイミン氏は「この人工衛星が反射する光は夕闇に似たもので、動物の概日リズムに影響するものではない」と述べている。

反射鏡を用いて太陽光を反射させ、街の明かりとして活用する事例としては、ノルウェー南東部の谷底にある小さな町リューカンで2013年に創設された「ソールスピーレット」(ノルウェー語で「太陽の鏡」の意味)が広く知られている。急な山の斜面に17メートル四方の巨大な鏡を3枚設置し、太陽光を反射させることで、日照時間が短い冬の間、町の中心部にある600メートル四方の広場を明るく照らす仕組みだ。

"人工の月"の打ち上げに向けた具体的なスケジュールや打ち上げ後の運用方針など、詳細についてはまだ明らかにされていないが、成都市では、街路灯の設置コストやエネルギーコストの削減につながると期待を寄せている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国、二国間貿易推進へ米国と対話する用意ある=商務

ビジネス

ノルウェー・エクイノール、再生エネ部門で20%人員

ワールド

ロシア・イラク首脳が電話会談 OPECプラスの協調

ワールド

トランプ次期米大統領、ウォーシュ氏の財務長官起用を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 7
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 8
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中