最新記事

宇宙

木星は他の惑星とまったく異なる磁場を持つ:探査機ジュノーの観測データから判明

2018年9月10日(月)18時15分
高森郁哉

木星は他の惑星とまったく異なる磁場を持つ Nature

木星探査機「ジュノー」から得た観測データをもとに、木星の磁場のマップが作成された。木星の磁場は、地球を含む他の惑星とまったく異なる複雑なものであることがわかったという。

非双極子と双極子の磁場

ハーバード大学の大学院生キンバリー・ムーア氏らによる研究論文が英学術誌「ネイチャー」に掲載され、本誌米国版などが報じた。

米航空宇宙局(NASA)が2011年に打ち上げたジュノーは、2016年から木星の軌道を周回。木星の表面近くの磁場の直接測定に初めて成功し、このデータを分析することで、木星内部の磁場のマップが得られた。

木星では、「ダイナモ領域」(磁場を生成する部分)をから外部に出た磁束(空間内を通り抜ける磁場の流束)の大部分が、北半球の帯域を通り、赤道近くの大青班で木星の内部に戻っていることが明らかになった。また、こうした木星の北半球の地場は、地球のようにS極とN極が両端にある「双極子磁場」とは異なる「非双極子磁場」だが、南半球はほぼ双極子磁場になっていることもわかった。

木星内部の推測

ムーア氏はニューズウィークに対し、磁場から推測される木星内部の状態について、「北半球と南半球で独立した2つの層がそれぞれ対流しているか、南半球のみ対流しない安定した層になっている可能性がある」と語った。

共同執筆者の1人であるNASAのジョン・コナーニー氏は、今回の磁場のモデルは、全体で34周回のうち初期の8周回分の観測データに基づいて作成されたと指摘。「今後さらに詳しい磁場のデータが得られることで、内部の対流についても明らかにできるのでは」と期待を語った。

ジュノーの木星探査は、2021年7月まで継続される予定だ。


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

インタビュー:26年春闘、昨年より下向きで臨む選択

ビジネス

3メガ銀の通期最高益へ、貸出増と金利上昇が追い風 

ワールド

中国習主席、タイ国王と会談 信頼できる隣国を強調

ワールド

ハマス、ガザで支配体制再構築 停戦発効から約1カ月
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前に、男性が取った「まさかの行動」にSNS爆笑
  • 4
    文化の「魔改造」が得意な日本人は、外国人問題を乗…
  • 5
    「水爆弾」の恐怖...規模は「三峡ダムの3倍」、中国…
  • 6
    『トイ・ストーリー4』は「無かったコト」に?...新…
  • 7
    中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも…
  • 8
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 9
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 10
    ファン激怒...『スター・ウォーズ』人気キャラの続編…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 8
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 9
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中