最新記事

日本

日露平和条約締結は日本の決断次第──そろそろ2島返還で決着の時だ

2018年9月14日(金)16時00分
古谷経衡(文筆家)

訪露時の安倍首相とプーチン大統領 Mikhail Metzel/TASS Host Photo Agency/REUTERS

<プーチン発言はあながち間違っていない。日本政府はサンフランシスコ講和条約で国後・択捉を一度は放棄しているからだ>

プーチン露大統領が12日、ウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムで「年内の平和条約締結を」と発言したことが大きな波紋を呼んでいる。時事通信の記事によると、「プーチン氏が平和条約締結の期限を提案したのは初めて」(2018年9月12日付)とのこと。

また同記事中では、プーチン大統領の発言として、「プーチン氏は平和条約締結後に北方領土の色丹島と歯舞群島の引き渡しをうたった1956年の日ソ共同宣言に言及した上で、「日本が履行を拒否した」と述べ、その結果、戦後70年にわたって交渉が続いていると主張」とある。

日本人の多くはこのプーチン発言を「一方的なロシアの言い分ではないか?」と捉えるかもしれないが、いや実際には一理も二理も、プーチン発言は正しい側面がある。いったいどういうことだろうか?

千島全島を放棄した日本

1945年8月9日、米軍による長崎原爆投下とほぼ時を同じくして、ソ連が日ソ中立条約(1946年春まで有効)を破り、満州、朝鮮北部、南樺太、千島への侵攻を開始したのは既知の事実だろうから簡潔に述べる。日本がポツダム宣言受諾を発表した8月15日以降も、ソ連軍は千島全域を占領するべくして軍事行動した(―この過程で北千島の占守島などで激しい抵抗があった)。なぜか。

ヤルタ協定(1945年2月)によって、「ドイツ降伏後数か月以内に、ソビエトは日本に宣戦布告する。見返りとしてソ連は、日露戦争で失った土地―南樺太、千島を獲得し、満州に権益を持つ」ことが、米英の連合国によって内々に合意されていたからだ。一般にこの協定を「ヤルタの密約」と呼ぶ。当然この会談の内容は、日本政府や日本軍部が知る由もなかった。日本が降伏する以前に、千島・樺太の運命は日本の知らないところで決定されていたのだ。

1945年8月15日、ポツダム宣言受諾。同9月2日、降伏文章調印。日本の戦争は終わった。そしてGHQによる7年間の占領期間を経て、日本が国際社会に復帰するための第一歩「サンフランシスコ講和条約(1952年)」が締結され、日本は独立を取り戻した。問題になるのはこの条約内のこの文章。


(第二条c)日本国は、千島列島並びに(中略)樺太の一部及びこれに近接する諸島に対するすべての権利、権原及び請求権を放棄する。

ここではっきりと書いているように、日本は主権回復(独立)と引き換えに、南樺太は当然のこと千島列島も放棄しているのである。

国後、択捉をいったん放棄した日本

ではサンフランシスコ講和条約で放棄した「千島列島」とはどの島々を指すのかといえば、当然、国後島・択捉島を含む占守島までの全千島である。事実、1951年9月7日、吉田茂首相はサンフランシスコ講和条約で「放棄した千島列島には、北千島と南千島(国後島・択捉島)が含まれる」と明言し、同年1951年10月19日、西村外務省条約局長は衆議院での国会答弁でも同様の政府見解を繰り返した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、米雇用統計予想下回る 円は

ワールド

米、ベネズエラと連携し石油タンカー拿捕=トランプ氏

ビジネス

米国株式市場=S&P500過去最高値、ブロードコム

ワールド

韓国から無人機新たに飛来、北朝鮮が主張
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AI兵士の新しい戦争
特集:AI兵士の新しい戦争
2026年1月13日号(1/ 6発売)

ヒューマノイド・ロボット「ファントムMK1」がアメリカの戦場と戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    「不法移民からアメリカを守る」ICEが市民を射殺、証…
  • 6
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 7
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 8
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 9
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 5
    眠る筋力を覚醒させる技術「ブレーシング」とは?...…
  • 6
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 7
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 8
    アメリカ、中国に台湾圧力停止を求める
  • 9
    「グリーンランドにはロシアと中国の船がうじゃうじ…
  • 10
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中