モーリー・ロバートソン解説:「9条教」日本の袋小路
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「9条バリア」がもたらすもの
話は飛びますが、イスラエルにはパレスチナの武装勢力ハマスなどが撃ち込んできたロケットをすぐに撃ち落とすことができる「アイアンドーム」と呼ばれる防空ミサイルシステムがあります。そのおかげで攻撃されにくいという、抑止力の1つです。さしずめ、日本人の多くは憲法9条がそのシールドであって、想像上のアイアンドームに守られていると思っているわけでしょう。だから、自分たちが撃たない限り相手も撃ってこないと信じている。
ただ、「9条ドーム」のバリアを北朝鮮のミサイルなどが打ち破って日本に着弾したら? 突然、現実が目の前に来ちゃうわけですけれど、日本人はそのことをどこまで現実的に考えているのでしょうか?
いわば「9条教」ともいえる宗教を信じてきた日本人は、トランプ政権を支える「トランプ教徒」たちをあざ笑うことはできない。もちろん、両者を比較したら9条を信じている日本人のほうがはるかに教養レベルが高いですが。だけど、同じくらい現実に向き合えないという点では共通しているんです。つまり、どちらもアンチ・リアリズム。現実を突き付けられることがあまりに苦痛を伴うため、自分の思考回路がよって立つところを失ってパニックになって過呼吸になる。そんなところは似ていると思います。
そういう「9条スピリット」の人々は日朝関係にも影を落とす可能性が大いにあります。北朝鮮情勢が緊迫した昨年や、その後に韓国が音頭を取って進めた米朝首脳会談に至るまでの過程で日本が何も関与できていないと嘆く人が結構いました。日本が置き去りにされているという、いわゆる「蚊帳の外」論です。でも結論から言えば、日本にできることなど別に何もなかった。「9条」に縛られて日本が攻撃力を持たない以上、これは宿命だと思います。
あまりこういう主張をして右派勢力みたいに思われたくないけれど、合理的に考えると独自の攻撃能力を持たない国が、戦争や軍事力でしか話をつけられない北朝鮮や中国を相手にハト派外交や経済外交だけで話をつけようと考えるのは無理な話。それを肩代わりするのが集団的自衛権であり、アメリカとの同盟関係なのであって、だからこそ中朝も、対日外交では背後にいるアメリカと交渉しているつもりだった。
ハト派外交や経済外交が効かないとなれば、日本は北朝鮮に対して経済制裁をはじめ最大限の圧力をかけ続けるしかない。ですが、別のシナリオとして考えられるのは、北朝鮮がにわかに友好ムードを演出するということです。例えば、1人か2人の拉致被害者を日本に帰すことなどが考えられます。もともと日朝双方には、まず国交正常化してから拉致問題を解決させるという考え方が意外と根強くありますから。
ただ、そのように「9条スピリット」の人々が喜ぶことを北朝鮮が行うと、日本が大損する恐れがある。