最新記事

アイルランド

アイルランドが国民投票で中絶合法化、同性婚に続く「静かな革命」が進行中

2018年5月28日(月)15時30分
ソフィア・ロット・パーシオ

憲法修正第8条は、1983年の国民投票で成立した。「胎児の生きる権利」を保護するために母親の権利と同等の地位を与え、あらゆる状況において実際上は中絶を禁じるものだ。

当時のピーター・サザーランド法務長官は、この修正条項は「あいまいで不明確」であり、法的混乱につながると警告した。

事実、過去35年間で、この修正条項は最高裁判所における数々の法廷闘争の対象となり、1992年の国民投票でも問われた。このときは女性に国外で妊娠中絶の手術を受ける権利や、海外の中絶サービスに関する情報を受け取る権利があることが認められた。

アイルランド政府は次に、妊娠12週間までの中絶を可能にする法律を制定する予定だ。12〜24週は、胎児に生きる望みがない場合、また母体が重大な危険にさらされている場合にのみ、中絶が認められる。

重要な医療サービスを否定された女性たち

妊娠24週以降は、胎児が致死的な異常を発症した場合にのみ中絶が許可される。

反中絶団体は26日の朝、中絶を認める法案の成立と徹底的に戦うことを誓った。

アイルランドの「革命」により取り残された形になったのが、中絶を厳しく禁じる法律が現在も残るイギリスの北アイルランド。中絶支持派の次の標的だ。

「北アイルランドの女性たちは、いまだに古めかしい堕胎禁止令によって迫害されている」と、アムネスティ・インターナショナルのグレイン・テガートはプレスリリースで述べた。「北アイルランドの女性は、中絶という重要な医療サービスを自国で受けることができず、海外に出ざるをえない。これは偽善的であり、女性を貶め、侮辱している」

「イギリス政府はもはや見て見ぬふりをすることはできない。私たちはイギリスの片隅に取り残され、アイルランドでは二級市民扱いされたままではいられない」

(翻訳:栗原紀子)


20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさかの密航者」をCAが撮影...追い出すまでの攻防にSNS爆笑
  • 4
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 5
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 7
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 8
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 9
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 10
    オレンジの閃光が夜空一面を照らす瞬間...ロシア西部…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 7
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 8
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中