最新記事

マリファナ

医療大麻の新時代到来か 「大麻先進国」カナダ企業が薬品開発を加速

2018年3月1日(木)15時40分

カナダは2015年、より先進的な医薬品の基礎となり得る大麻成分の分離を認め、カンナビノイド抽出物の販売を許可することで、本格的な医学研究に道を開いた。

政府が昨年、嗜好用大麻を合法化する法案を提出して以降、研究と投資のペースが急速化。カナダの大麻企業による株売り出しは昨年、10億ドル近くと3倍に増えた。

キャノピー・ヘルスは昨年、他の機関や研究者らと治験を行うため1600万カナダドル(約13億円)の資金調達を行ったと、同社のウェインCEOは語った。同社は睡眠改善薬の特許27件を申請しており、現在は不安神経症治療薬の開発に取り組んでいる。2020年ごろまでに政府から最初の承認を得る見通しだ。

時価総額53億カナダドルの上場企業であるキャノピー・グロースは、未上場のキャノピー・ヘルス株の46%を保有している。

キャノピー・ヘルスのライバル企業の1つ、カニメッド・セラピューティクスは先月、オーロラ・カンナビスによる買収に合意。これによりオーロラ・カンナビスの時価総額は60億カナダドルに膨らみ、世界最大の大麻企業となる。

カニメッドは、モントリオールにあるマギル大学やマニトバ大学といった大学機関と提携し、多発性硬化症や変形性関節症、小児てんかんの治療薬を研究している。

「(他国企業に比べて)自由に活動でき、現在では資金も十分なため、カナダ企業は業界をリードしている」とカニメッドのブレント・ゼトルCEOはロイターとのインタビューで語った。

医師と保険会社を説得

吐き気の改善や緑内障の治療など、医療大麻は長年にわたり使用されてきたが、医療業界にその医学的価値を納得させるような研究はあまり存在しない。

大麻は通常、患者が自ら求めた場合に処方されるだけだ。また、「医療用大麻が嗜好用としてよく使われる」ことは公然の秘密となっている。

「実際のところ、医療用大麻の世界は患者主導で動いている」と、医師の資格を持つエメラルド・ヘルス・セラピューティクスのアブター・ディロン経営執行役会長は説明。「エビデンスを欲しがる医師の気持ちは分かる」と語った。

エメラルドはまもなく、大麻の成分を使用した鎮痛剤について、人を使った臨床試験を開始するとディロン会長は明らかにした。

カナダで医療用大麻をカバーする保険は、スーパー最大手ロブローの従業員保険や復員軍人省、保険会社サン・ライフ・ファイナンシャルなどほんのわずかしかない。

「この植物について学ばなければならないことがたくさんある。研究はその医学的効果を数値化し、立証するのに大いに貢献する」と、カナダPIファイナンシャルで中小の成長企業を担当するリサーチアナリスト、ジェイソン・ザンドバーグ氏は言う。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国軍が東シナ海で実弾射撃訓練、空母も参加 台湾に

ビジネス

再送-EQT、日本の不動産部門責任者にKJRM幹部

ビジネス

独プラント・設備受注、2月は前年比+8% 予想外の

ビジネス

イオン、米国産と国産のブレンド米を販売へ 10日ご
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 2
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2人無事帰還
  • 3
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    あまりにも似てる...『インディ・ジョーンズ』の舞台…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 8
    「隠れたブラックホール」を見つける新手法、天文学…
  • 9
    イラン領空近くで飛行を繰り返す米爆撃機...迫り来る…
  • 10
    【クイズ】アメリカの若者が「人生に求めるもの」ラ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 7
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中