最新記事

日本政治

それでも安倍政権にNOと言えない保守派──森友学園文書書き換え問題

2018年3月14日(水)21時20分
古谷経衡(文筆家)

森友文書改ざんに抗議する官邸前デモ参加者が掲げるプラカード(3月12日) Kim Kyung-Hoon-REUTERS

行政の長として......

森友学園に関する文書書き換え問題が熱を帯びる。いま保守派の中には、従前から強烈に安倍政権を応援していたが為に、あらゆる理屈をこねくり回して、この問題に関し、「安倍夫妻は悪くない」と弁明する風潮が目立つ

安倍総理のこの問題への関与の有無・度合いは不明だが、「行政全体の信頼を揺るがしかねない事態であり、行政の長として責任を痛感している」(3月12日)と自ら述べたたように、「公文書の書き換え」は「知人に便宜を供与した疑惑」などとは次元が違う。

公文書は国民共有の財産であり、本件は民主主義国家の根幹を揺るがしかねない大事件だ。少なくとも行政の長としての批判を甘受するべきである。

とりわけ昭恵夫人は、そもそもこの問題発生のきっかけを作り、「瑞穂の国記念小学院」名誉校長の職を受け入れたのだから、単なる詐欺事件の被害者では無い。被害者であるなら、公文章から名前を削除する合理的な理由は無い。

昭恵夫人がどのようなプロセスで森友学園に関わったのか。夫人が土地売却の判断に影響を与えたのか、与えなかったのか。その詳細は徹底的に明らかにされるべきである。

NOといえない保守派

しかし目下、この国の保守派は3月2日に朝日新聞が第一報のスクープを報じた際、「朝日のフェイクニュースである」「朝日新聞にこそ立証責任がある」と早々に断定する動きが目立った。朝日新聞による「(従軍慰安婦)吉田清治証言」「(福島第一原発)吉田調書」の記事撤回(2014年)が念頭にあったのだろう。

だが、一転して朝日の報道が真実であると分かると、「悪いのは佐川局長らであって、安倍夫妻は関係が無い」「近畿財務局が勝手にやったこと」などと転換した。

朝日新聞への攻撃は急速になりを潜め、代わりに、どうしても安倍政権にNOと言えない雰囲気が醸成され続けている。

国や政府が間違った時に、NOといえなければ単なる事大主義者とみなされ、その言は信用されなくなる。保守派こそ勇気を出して政権の誤りにはNOを言うべきだ。

安倍政権に操を立て続け......

第二次安倍政権誕生以後の約5年半、この国の保守派は常に安倍政権に操(みさお)を立て続けてきた、と言って良い。もっともこの間、旧次世代の党(2014年衆院選)、2014年都知事選挙(田母神俊雄)、2016年都知事選挙(小池百合子)など、必ずしも安倍総理の支持と合致しない支持の分散はあった。

しかし概ね、第二次安倍政権誕生以降5年半、保守派はどんなことがあっても常に安倍政権を支持し続けてきたのである。

一方、第二次安倍政権は、発足直後から現実主義を採り、必ずしも保守派が望む政策を採ってこないばかりか、日本国内の保守派の期待を露骨に裏切る冷淡な対応をみせ続けた。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米国株式市場・寄り付き=ダウ約300ドル安・ナスダ

ビジネス

米ブラックロックCEO、保護主義台頭に警鐘 「二極

ビジネス

FRBとECB利下げは今年3回、GDP下振れ ゴー

ワールド

ルペン氏に有罪判決、被選挙権停止で次期大統領選出馬
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「最大の戦果」...巡航ミサイル96発を破壊
  • 4
    「炊き出し」現場ルポ 集まったのはホームレス、生…
  • 5
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 10
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中