シルク・ドゥ・ソレイユ出演中の日本人ダンサーに聞く
日本人ダンサーの池田一葉がメインキャラクターの1人クララを演じる
<大学時代に渡米し、厳しいオーディションを経て『ダイハツ キュリオス』に出演中の池田一葉が語る舞台の見どころ>
カナダの独創的なサーカス団シルク・ドゥ・ソレイユの公演『ダイハツ キュリオス』が東京で開幕中だ。産業革命時代に近未来を合わせたイメージの舞台で、主人公シーカーが実験室内で想像した世界が描かれる。
主人公に並ぶキャラクターの1人、クララを演じるのが日本人ダンサーの池田一葉だ。ダンスを学ぶため大学時代に渡米し、12年に入団オーディションに合格。公演に参加できるアーティストは全体の5%という中で、今回の役をつかんだ彼女に話を聞いた。
――大学時代に渡米しているが。
高校時代にヒップホップダンスを始め、大学3年生のときに休学してロサンゼルスに行った。親とは1年間という約束をしていたが、ダンスの勉強をもっと続けたくなったので日米を行ったり来たりして卒業し、そのままロスに住んでいる。
シルク・ドゥ・ソレイユの公演は、05年にラスベガスを旅行したときに「O(オー)」を見たのが最初。すごく感動したが、自分はアクロバットはやらないので、そのときは入りたいとは考えなかった。でもその後、友達の姉がダンサーとして所属していることを耳にし、同じ時期にシルク・ドゥ・ソレイユの『マイケル・ジャクソン イモータル』というツアーのオーディションがあって。ダンサーを使うショーがあることを知り、「入りたい」とすごく思うようになった。
大学は早稲田の人間科学部で、スポーツ倫理やスポーツ心理学を学んだ。アスリート系ですね。私が思うに、ダンサーには芸術性の強い人とアスリート的な人の2種類がいる。私は目標達成のプロセスだったり、メンタルの構築だったりが、どちらかというとアスリートに近いと思う。
――ほかの舞台作品などと比べて、シルク・ドゥ・ソレイユが特別な点は?
演目やテーマだけでなく、構成やメークや衣装、舞台装置まで、全てにおいて妥協がないところ。それが観客にも伝わっていると思う。
シルク・ドゥ・ソレイユはサーカスの枠から出た新しいことをして大きくなってきたカンパニー。でも演出のミシェル・ラプリーズも言っているように、『ダイハツ キュリオス』はあえてローテクにこだわり、サーカスを現代風につくり変えているところがほかの作品と違う。
ストーリーが何層にも作られているので、初めて見ても、何回見てもそれぞれ発見があることも魅力。疲れたり落ち込んだりしたときに見てもらえば、すごく幸せになれるショーだと思う。
――ほかの出演者の危険なアクロバットは、安心して見ていられるもの?
普段の練習風景などを見ているので、彼らが一流のパフォーマーであることはよく分かっている。観客として初めて公演を見たときはドキドキしたが、一緒にやっていくうちに、「この人たちは大丈夫なんだ。危険なことはない」と思うようになった。
――クララの表現で気を付けているところは。
クララは感情の変化が大切な役なので、少しずつそれを出せるようにするにはどうしたらいいか、日々考えている。ここまで細かい演技をするのは初めてなので、「疲れたな」と思ったときはすぐに鏡でどんな顔をしているのか確認したり、「うれしい」と思ったときはどんな行動を取っているのか注意したりと、自分や他人を細かく観察するようになった。