最新記事

エンターテインメント

シルク・ドゥ・ソレイユ出演中の日本人ダンサーに聞く

2018年2月20日(火)15時40分
大橋 希(本誌記者)

日本人ダンサーの池田一葉がメインキャラクターの1人クララを演じる

<大学時代に渡米し、厳しいオーディションを経て『ダイハツ キュリオス』に出演中の池田一葉が語る舞台の見どころ>

カナダの独創的なサーカス団シルク・ドゥ・ソレイユの公演『ダイハツ キュリオス』が東京で開幕中だ。産業革命時代に近未来を合わせたイメージの舞台で、主人公シーカーが実験室内で想像した世界が描かれる。

主人公に並ぶキャラクターの1人、クララを演じるのが日本人ダンサーの池田一葉だ。ダンスを学ぶため大学時代に渡米し、12年に入団オーディションに合格。公演に参加できるアーティストは全体の5%という中で、今回の役をつかんだ彼女に話を聞いた。

***

――大学時代に渡米しているが。

高校時代にヒップホップダンスを始め、大学3年生のときに休学してロサンゼルスに行った。親とは1年間という約束をしていたが、ダンスの勉強をもっと続けたくなったので日米を行ったり来たりして卒業し、そのままロスに住んでいる。

シルク・ドゥ・ソレイユの公演は、05年にラスベガスを旅行したときに「O(オー)」を見たのが最初。すごく感動したが、自分はアクロバットはやらないので、そのときは入りたいとは考えなかった。でもその後、友達の姉がダンサーとして所属していることを耳にし、同じ時期にシルク・ドゥ・ソレイユの『マイケル・ジャクソン イモータル』というツアーのオーディションがあって。ダンサーを使うショーがあることを知り、「入りたい」とすごく思うようになった。

大学は早稲田の人間科学部で、スポーツ倫理やスポーツ心理学を学んだ。アスリート系ですね。私が思うに、ダンサーには芸術性の強い人とアスリート的な人の2種類がいる。私は目標達成のプロセスだったり、メンタルの構築だったりが、どちらかというとアスリートに近いと思う。

――ほかの舞台作品などと比べて、シルク・ドゥ・ソレイユが特別な点は?

演目やテーマだけでなく、構成やメークや衣装、舞台装置まで、全てにおいて妥協がないところ。それが観客にも伝わっていると思う。

シルク・ドゥ・ソレイユはサーカスの枠から出た新しいことをして大きくなってきたカンパニー。でも演出のミシェル・ラプリーズも言っているように、『ダイハツ キュリオス』はあえてローテクにこだわり、サーカスを現代風につくり変えているところがほかの作品と違う。

ストーリーが何層にも作られているので、初めて見ても、何回見てもそれぞれ発見があることも魅力。疲れたり落ち込んだりしたときに見てもらえば、すごく幸せになれるショーだと思う。

――ほかの出演者の危険なアクロバットは、安心して見ていられるもの?

普段の練習風景などを見ているので、彼らが一流のパフォーマーであることはよく分かっている。観客として初めて公演を見たときはドキドキしたが、一緒にやっていくうちに、「この人たちは大丈夫なんだ。危険なことはない」と思うようになった。

――クララの表現で気を付けているところは。

クララは感情の変化が大切な役なので、少しずつそれを出せるようにするにはどうしたらいいか、日々考えている。ここまで細かい演技をするのは初めてなので、「疲れたな」と思ったときはすぐに鏡でどんな顔をしているのか確認したり、「うれしい」と思ったときはどんな行動を取っているのか注意したりと、自分や他人を細かく観察するようになった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国11月鉱工業生産・小売売上高、1年超ぶり低い伸

ビジネス

防衛費増額、生産体制など国の要請に基づき対応=三菱

ワールド

焦点:ニューサム氏ら民主党有力州知事、「反トランプ

ワールド

チリ大統領選で右派カスト氏勝利、不法移民追放など掲
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 5
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中