米国防省、北朝鮮の核攻撃に向け準備 放射線治療薬の開発急ぐ
1月31日、北朝鮮と米国の間で核戦争の危険性が高まる中、米国防総省は、企業と協力して急性放射線症候群(ARS)の効果的な治療薬開発に向けて動き出した。写真は、北朝鮮のICBM「火星14」の発射実験。KCNAが昨年7月提供(2018年 ロイター/KCNA via Reuters)
北朝鮮と米国の間で核戦争の危険性が高まる中、米国防総省は、企業と協力して急性放射線症候群(ARS)の効果的な治療薬開発に向けて動き出した。
世界的に孤立する北朝鮮が昨年11月、米国本土に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を実施して以来、米朝間の緊張は一段と高まっている。
ワシントンの衛生当局者は、もし万一核攻撃を受けて、放射能中毒が拡大した場合でも、対処するのに十分な治療薬の備蓄があると言う。
だが、いくつかの製薬会社の声明や政府が発表した提携は、国防総省が核攻撃に備え、軍人と市民の両方を守るため、さらに効果的な治療薬の開発に本格的に乗り出したことを示している。
国防総省の2018年予算では、こうした医療対策向けに前年比60万ドル増の390万ドル(約4億3000万円)を計上している。
しかし、クリーブランド・バイオラブや未上場のヒューマネティクス・コーポレーションなどの企業と交わした契約書にある実際の数字をみると、同省は少なくとも1300万ドルの資金を提示しており、関連する他部署も関与している可能性を示唆している。
開発に成功した製薬会社への報酬はばく大だ。政府は2013年、30年近く使われているアムジェンの白血球減少を改善する「ニューポジェン」を備蓄するため、1億5700万ドルを費やした。だが、同医薬品を含む備蓄薬は、被ばくによるある特定の後遺症に効果が限られるため限定的だった。
トランプ大統領が先月、増額された7000億ドルの軍予算に署名したことにより、北朝鮮の脅威に対抗するための対策に重点が置かれ、新薬開発予算を膨らませる可能性があると、医療専門家は指摘する。
開発段階にある放射線障害の新薬は、白血球、赤血球、血小板の減少を改善する。何度も血液検査をしたり、事前に検査をする必要もない。
前出のクリーブランド・バイオラブと非公開企業の米ニューメディシンズ、そしてイスラエルのプルリステム・セラピューティクスは、それぞれ開発の最終段階にある。一方、ヒューマネティクスは経口薬の治験をまだ開始していない。