最新記事

仮想通貨

それでもビットコインは「カネ」になれない

2017年8月10日(木)11時30分
リー・キューエン

Volker Mohrke-Corbis/GETTY IMAGES

<「分裂」してもビットコインを普及させたい、仮想通貨支持者の悲願を阻むもの>

ビットコインの独立記念日だ――。7月末、仮想通貨ビットコインを制御していたシステムの「分裂」によって、新たな仮想通貨ビットコインキャッシュ(BCH)が誕生した。ビットコインの普及を切望する人々は、BCHの最初の取引が行われた8月1日を高らかに祝い、仮想通貨の未来に期待を寄せた。

だが、彼らが願うほど仮想通貨が広く一般社会に浸透するかは微妙なところだ。それは結局のところ、リアルなカネと同じように、ビットコインにも政治が強く影響を及ぼすから、ということになりそうだ。

ビットコインの熱心な支持者らは、仮想通貨は単に金持ちになる道具ではなく「人々を自由にする」ものだと確信している。ビットコインによる取引を可能にする技術ブロックチェーンのトークン(代用貨幣)を使えば、銀行や政府に自分の身元や残高を知られずに取引ができるため、経済的な自主性を手にできるというのだ。

だが、多くの専門家は仮想通貨がカネの概念を根本的に変えるという考えは甘いと言う。ビットコイン財団の共同創設者で、仮想通貨に関連する法律の専門家でもあるパトリック・マークもその1人。「ブロックチェーンは拡張性があまりない」と、マークは指摘する。

ビットコインは汎用性が低いということだが、少なくとも近い将来に仮想通貨で全ての取引を扱うのは無理だろうと指摘する。

何より、ビットコインが国際通貨の地位を手にするほどに拡大しても、通貨政策を決めるのは結局、各国政府だ。異なる仮想通貨による覇権争いも予想される。実際、中国やロシアは既に独自の仮想通貨の開発を行っており、アメリカとの競争が考えられる。拡張性といった技術的な問題に関係なく、ビットコインの未来は政治で決まるのだ。

【参考記事】ビットコイン大国を目指すスイスの挑戦

資産管理としては機能?

仮想通貨モネロの共同開発者、リカルド・スパグニも同じ考えだ。彼は、理論的にはテクノロジーがカネを政治から解放できたとしても、それが現実にはならないと指摘。仮想通貨が普及しても、ニッチな存在であり続けるだろうと予想している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:失言や違法捜査、米司法省でミス連鎖 トラ

ワールド

アングル:反攻強めるミャンマー国軍、徴兵制やドロー

ビジネス

NY外為市場=円急落、日銀が追加利上げ明確に示さず

ビジネス

米国株式市場=続伸、ハイテク株高が消費関連の下落を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 5
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 6
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    【独占画像】撃墜リスクを引き受ける次世代ドローン…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中