最新記事

アメリカ経済

かい離する政治と経済、トランプはますますクリントンに似てきた

2017年8月7日(月)08時00分
安井明彦(みずほ総合研究所欧米調査部長)

アメリカ株は8月4日、ダウ工業株30種平均が2万2000ドルの大台を超えた(写真は7月) Brendan McDermid-REUTERS

<トランプ政権の大混乱をよそに、ダウ工業株30種平均は2万2000ドルの大台を超えた。この株高は異常なのか、かい離の謎を解く>

かつてない政治混乱を横目に、米国の経済は堅調に推移している。政治と経済の鮮明なかい離は、まるで1990年代のビル・クリントン政権をみているようだ。

株価は最高値を更新

米国で、政治と経済のかい離が鮮明になっている。

8月2日、米国のダウ工業株30種平均は、過去最高値を更新し、初めて2万2,000ドル台で取引を終了した。さすがに高値警戒感はあるものの、好調な企業業績などが株価を支えている。首席補佐官の交代やオバマケア改廃の躓きなど、トランプ政権下の政治の混迷は深まるばかりだが、市場は全く気にしていないようだ。

それどころか、過去の政権と比較すると、未曾有の混乱にもかかわらず、トランプ政権下の株式市場の成績は上々だ。1990年代のクリントン大統領以降の4人の大統領について、就任後の株価の上昇度合いを比べると、トランプ大統領就任後の上昇度合いは、金融危機後の急回復と重なったオバマ大統領に続き、二番目に大きい(図表1)。

yasui170807.jpg

こうした政治と経済のかい離は、1990年代のクリントン政権を思い起こさせる。クリントン大統領も、必ずしも政権の滑り出しは順調ではなかった。それでも、株価の上昇度合いは、トランプ政権に近い大きさだった。

ホワイトハウスの統率に苦しむ

政権初期における政治の混乱という点では、トランプ政権とクリントン政権が置かれた状況は、驚くほど似通っている。

トランプ政権の混乱は、少数の側近に頼りつつ、ホワイトハウスを統率できない大統領のマネジメントに原因の一端がある。一方、首都ワシントンに新風を吹き込もうとしたクリントン大統領も、政治のベテランを上手く使いこなせず、やはりホワイトハウスの統率に苦しんだ。さらに言えば、トランプ大統領がロシアゲートに翻弄されているように、クリントン大統領にも、州知事時代の不動産事業に関する疑惑(ホワイトウォーター疑惑)があった。

所属政党が議会の多数党でありながら、自らの公約実現に苦労した点も同じである。クリントン大統領は、公約の目玉である中間層減税をあきらめざるを得なかった。トランプ大統領の公約である税制改革も、その実現が危ぶまれている。トランプ大統領によるオバマケアの改廃が難航しているように、クリントン大統領もヒラリー夫人が指揮する医療保険制度改革が難題となった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

インドネシア中銀、ルピア圧力緩和へ金利据え置き 2

ビジネス

MS&AD、純利益予想を上方修正 損保子会社の引受

ワールド

アングル:日中対立激化、新たな円安の火種に 利上げ

ビジネス

農林中金の4ー9月期予想上振れ 通期据え置きも「特
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影風景がSNSで話題に、「再現度が高すぎる」とファン興奮
  • 4
    マイケル・J・フォックスが新著で初めて語る、40年目…
  • 5
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 6
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 7
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 8
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 9
    「これは侮辱だ」ディズニー、生成AI使用の「衝撃宣…
  • 10
    「嘘つき」「極右」 嫌われる参政党が、それでも熱狂…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中