「国境税」の脅威、トヨタら企業はロビー活動で阻止へ
ベビー用品、ビールにも影響
こうしたロビー活動を行っているのはトヨタなど自動車メーカーだけではない。
米ディスカウントストア大手ターゲットのブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)はワシントンに出張して下院歳入委員会のメンバーと面会した。
関係筋によれば、コーネルCEOは議員たちに、国境税が実現すれば、米国に輸入されている海外製ベビー用品などの生活必需品を消費者が購入することが難しくなると語った。ターゲットの広報担当者ダスティ・ジェンキンス氏も、この訪問が行われたことを認めている。
ミネアポリスを本拠とするターゲットのやや南に本社を置くのが、米家電小売最大手のベストバイだ。同社は、「20%の国境税が課されれば、ベストバイの年間予想純利益10億ドルは消えてなくなり、逆に20億ドルの損失になる」というアナリストの予測を紹介するパンフレットを議員たちに配布している。
ロイターが閲覧したこのパンフレットによれば、中国のアリババなどのインターネット通販事業者は、オンラインで販売して、米国の消費者に商品を直接発送することで国境税を回避し、「米国ビジネスを損なう」と主張している。
ベストバイの広報担当者ジェフ・シェルマン氏は、社員が連邦議事堂で議員やそのスタッフにこのパンフレットを配布していたことを認めている。
メキシコ国内で「コロナ」「モデロ」といったビールを醸造している米アルコール飲料大手コンステレーション・ブランズは、メキシコ製ビールなどの製品は「本来はメキシコ製品である」という理由で国境税の対象から外すよう連邦議員に働きかけている。同社のロブ・サンズCEOが投資家向け業績報告のなかで明らかにした。
サンズCEOによれば、この取り組みが失敗した場合、コンステレーションはメキシコ産よりも米国産の原材料を多く調達していくことになるという。
米国第2位の非公開企業である複合企業コーク・インダストリーズは、ある声明のなかで、国境税は消費者にとって「破滅的な」影響を及ぼすだろうと述べている。
共和党への献金者であるチャールズとデイヴィッドのコーク兄弟が保有する同社は、石油精製事業・製造事業を抱えている。
富豪のコーク兄弟が設立した有力な保守系政治団体「アメリカンズ・フォー・プロスペリティ(AFP)」のティム・フィリップス理事長は、ロイターの取材に対し、同団体に所属している運動員たちが国境税に反対するロビー活動を開始できるよう、すでに啓発活動を開始したと話している。AFPによれば、同団体には200万人の運動員がいるという。