最新記事

リーダーシップ

優秀なチームの「失敗」を止める方法

2017年1月5日(木)20時10分
デレク・ニューベリー、マリオ・ムサ、マデリン・ボイヤー ※編集・企画:情報工場

PonyWang-iStock.

<ビジネスでもスポーツでも、チームが常に高いパフォーマンスを示し、成果を上げ続けるのは至難の業。たいていのチームは潜在力を生かしきれていない。それはチームの「カルチャー」と、外部環境の変化やチームメンバーの意識との間に「ズレ」が生じるからだ>

 全米プロバスケットボール協会(NBA)の2015‐16レギュラーシーズンも終盤となった2016年4月5日、ゴールデンステイト・ウォリアーズはミネソタ・ティンバーウルブズに敗北を喫した。

 この試合は、通常ならばそれほど話題にもならなかったはずだ。なぜならば、無敵の強さを誇るウォリアーズはすでにほぼトップシードをつかみとろうとしており、一方のティンバーウルブズは底辺をうろうろしている弱小チームだったからだ。どちらのチームにしても、この1試合の勝敗がシーズンの順位を大きく左右するわけでもなかった。しかし新聞は「まさかの敗北」「ウォリアーズ無敗神話崩れる」などと書きたてた。

 どうしてこんな騒ぎになったのか。実はウォリアーズには、シカゴ・ブルズがもっていた72勝10敗というこれまでのシーズン年間最多勝記録を更新する可能性があった。しかし、ほんの先に記録達成のゴールが見えていたにもかかわらず、ホーム試合3連戦のうち2試合を落としてしまったのだ。

 それまでESPN(スポーツ専門のケーブルテレビ局)は73勝9敗達成の見込みを90%と分析していたが、4月5日の試合以後は10%強まで下方修正した。

 これほどあからさまに期待と名声が剥がれ落ちたのは、どういうことなのだろう? ウォリアーズの選手たちは、シーズン終盤になって集中が切れていたことを理由に挙げた。それが杜撰なプレーや反則につながったのだという。

 この例を一般化すると、文句なしに勢いのある優秀なチームに、最悪のタイミングで何かしらの「ズレ」が生じたということだ。

 ビジネスの世界でも同じような現象は起こる。たとえばフォルクスワーゲンの排ガス不正。超一流企業で優れたリーダーシップを発揮していたチームが注意力を失い、倫理上の過失に気づかなかった。

 そんな例は他にもたくさんある。私たちは、ペンシルベニア大学ウォートンスクールでチームワークとコラボレーションの研究を行っている。そこで明らかになったのは、優秀な選抜チームを含むほとんどのチームが、彼ら自身の潜在力を生かしきっていないということだ。

 この研究では、同スクールのエグゼクティブ養成プログラム(EDP)において、100以上のチームが行う市場環境のシミュレーションを観察した。

 私たちはそこで、あらゆるチームに「ギャップ」が生じていることを発見した。それはたとえば協力関係を結びたいと口では言うものの、実際にはコラボレーションを行わない、といった言行不一致のギャップだ。

 世界的な会計事務所であるプライスウォーターハウスクーパースが世界中のCEOを対象に調査したところ、多くのCEOが、これと同じような「実行ギャップ」を組織の問題と捉えていた。

【参考記事】リーダーは「データ」より「目的意識」を重視せよ

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエルがガザ空爆、48時間で120人殺害 パレ

ワールド

大統領への「殺し屋雇った」、フィリピン副大統領発言

ワールド

米農務長官にロリンズ氏、保守系シンクタンク所長

ワールド

COP29、年3000億ドルの途上国支援で合意 不
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「このまま全員死ぬんだ...」巨大な部品が外されたまま飛行機が離陸体勢に...窓から女性が撮影した映像にネット震撼
  • 4
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 5
    「ダイエット成功」3つの戦略...「食事内容」ではな…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    ロシア西部「弾薬庫」への攻撃で起きたのは、戦争が…
  • 8
    「何も見えない」...大雨の日に飛行機を着陸させる「…
  • 9
    クルスク州のロシア軍司令部をウクライナがミサイル…
  • 10
    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 5
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 6
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対す…
  • 7
    北朝鮮は、ロシアに派遣した兵士の「生還を望んでい…
  • 8
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    寿命が延びる、3つのシンプルな習慣
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋…
  • 7
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 8
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 9
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 10
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中