最新記事

感染症

この冬忍び寄る鳥インフルエンザの猛威 韓国は史上最悪の事態に

2016年12月20日(火)20時05分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

高病原性鳥インフルエンザの感染が確認された北海道の養鶏場 MBCニュースより

<11月下旬からときおり報じられている高病原性鳥インフルエンザの発生が、次第に深刻な事態になりつつある。野鳥を媒介とした感染により、日本はもとより韓国では過去最悪の被害に拡大し、卵が入手困難になり始めている>

 11月14日、鹿児島県出水市で採取された野鳥のねぐらの水から高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N6亜型)が見つかったことが、鹿児島大学から発表された。これをはじまりとして、21日には秋田県で死亡したコクチョウ2羽、鳥取県で採取されたコガモの糞便から陽性反応が確認され、環境庁は野鳥サーベイランスにおける全国の対応レベルを最高レベルである「レベル3」に引き上げた。

 その1週間後、11月28日に青森県青森市で家きんとしては今年度国内初の高病原性鳥インフルエンザが発生、その後29日新潟県関川村、30日新潟県上越市、12月2日青森県青森市と、立て続けに感染が拡大した。また16日北海道清水町、19日宮崎県川南町で疑似患畜が確認されて、現在検査中となっている。これまでに家きんでは青森県のあひる農家2軒(合計約65,000羽)、新潟県の養鶏場2軒(約550,000羽)でいったん感染は治まっているが、野鳥では現在感染の検査中のものも含めて13道県113例が感染として報告されている。

ai_map.jpg

この冬の日本国内の高病原性鳥インフルエンザ発生状況(12月20日0時時点 農林水産省の資料より)

 鳥インフルエンザは鳥=鳥間で感染するA型インフルエンザの総称。水鳥では感染しても発症しないが、鶏やアヒル、七面鳥などの家きんが感染すると発症し、食欲を失い、呼吸器障害や下痢などを起こして元気が無くなり高い確率で死亡する。基本的には極めて稀な例をのぞき、鳥から人間への感染はないとされているが、人間の体内でヒトインフルエンザウイルスと交じることで人同士での感染能力をもつウイルスが生まれるおそれが指摘されており、WHOもこうした形で爆発的感染の恐れを指摘している。

 それだけに日本でも家きん農家を中心に、冬場に野鳥やネズミなどが飼養農場に侵入しないよう防護柵を設けるなどの対策をしているが、土や埃などまで完璧に外界と遮断することは難しいため、毎年散発的に家きんの感染が発生しているのが現状だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中