南アフリカの取引合法化はサイを救うか
密猟で殺された南アフリカのサイは、昨年1年間で1157頭。09年以降では合計6000頭を上回っている。密猟からサイを守るための負担は、ほぼヒュームのような飼育家の肩にのし掛かっているのが現状だ。
ヒュームが最初の1頭を購入したのは、93年。「サイの性格のよさを知り、同時に絶滅に瀕していることも知った」と、ヒュームは言う。「私が貢献する最善の方法は、繁殖させることだと思った」
ヒュームは、毎月約17万5000ドル以上を密猟対策に費やしている。そのかいあってこの9カ月は1頭もサイを失っていないが、これだけの支出を続けるのは難しい。それに危険もある。サイ飼育家とそのスタッフは、保管している角を狙う者たちに襲撃されることも。南アフリカでは今も330人がサイを飼育しているが、この2年間で廃業した人は70人に上る。
こうした状況下で、サイ飼育家の85%は、角の取引を合法化することこそ、サイの絶滅を防ぐ唯一の方法だと考えている。取引を解禁して需要を満たせば、ヤミ市場を壊滅させられるし、密猟対策と保護に必要な資金も得られるというのだ。
南アフリカでサイの角の国内取引が禁止されたのは、09年。保護を目的とした措置だったが、それが逆にサイを危険にさらしていると主張する人たちもいる。
「需要が増えているときに、それを満たせるだけの供給を行わなければ、代わりに供給しようとする人が出てくるのは当然だ」と、オックスフォード大学の博士候補生マイケル・トサスロルフス(保全経済学)は言う。
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象牙「解禁」の苦い教訓
この国内取引禁止措置は、近く解除されるかもしれない。多くのサイ飼育家は、この措置が南アフリカ憲法に違反していると主張。ヒュームともう1人のサイ飼育家は政府を相手取って裁判を起こし、既に第2審まで訴えが認められている。政府が上訴しているが、解禁の最終判断が示されても不思議はない。
しかし、国内取引を解禁することには強硬な反対論もある。合法化すれば、市場を制御し切れなくなるというのだ。
特に懸念されている点の1つは、市場が拡大することだ。取引を合法化すると、サイの角が社会的に許容される商品だというメッセージを発しかねない。その結果、これまで法律を尊重して思いとどまっていた人たちが、堂々とサイの角を買うようになる恐れがある。
自然保護団体の天然資源保護協議会(NRDC)が14年に中国の消費者の意識を調べた結果も、その懸念を裏付けている。「中国におけるサイの角に対する潜在的な需要は、サイ牧場などによる供給で満たせるよりずっと多い」と、調査責任者のアレキサンドラ・ケノーは言う。