最新記事

言論

百田尚樹氏の発言は本当に「ヘイトスピーチ」なのか?~ヘイトを生む「保守」の構造~

2016年12月2日(金)15時40分
古谷経衡(文筆家)

Kagenmi-iStock.

<犯罪者=在日コリアンという思考はなぜ保守論壇に広がったのか>

 千葉大学医学部の学生3名が、集団で女性に暴行した容疑で千葉県警に逮捕された事件をめぐり、作家の百田尚樹氏の以下のツイッター発言が「ヘイトスピーチだ」などとして議論を呼んでいる。

 千葉大医学部の学生の『集団レイプ事件』の犯人たちの名前を、県警が公表せず。犯人の学生たちは大物政治家の息子か、警察幹部の息子か、などと言われているが、私は在日外国人たちではないかという気がする。

 上記をめぐり、ジャーナリストの津田大介氏が「ツイッター社は規約違反により(百田氏の)アカウントを停止するべき」などとして議論が沸騰中だ。私は、ここ数年間、嫌というほどリアル・ネットの空間の別を問わず、耳を疑うような、決して言葉にすることが憚られるような、「異形」ともいうべきヘイトスピーチを見聞してきた。よって、社会的影響力の大たるベストセラー作家の言だとしても、上記発言に特段の感慨はない。

「この程度ならまし」を憂慮する

 むしろ、悲しむべきなのは、そういった直接的な「異形」のヘイトスピーチと比較して、「この程度ならまだしも穏健な方だ」と少しばかり得心してしまう自分についてである。少し前なら社会的生命を失いかねない言葉が、平然と大手を振って歩いている。百田氏云々よりも、こちらを憂慮するべきである。

 百田氏曰く「特定の民族を指したものではない」云々。確かに、字だけを読むと「(犯人らは)在日外国人ではないか?」という推論に過ぎない。しかし、百田氏の日頃の発言、とくにツイッターでの文脈を読んで、その「在日外国人」を「在日コリアン」へと読み替えることはそう難しいことではない。字だけ読めば百田氏の言う通り、これは推測なのだからヘイトスピーチというよりも、むしろ単なる「思い付き」というべきであろう。

 繰り返すように私は、もう何年も、ここでは書けぬようなとんでもない、在日コリアンに向けられた直接的憎悪の言葉を、何ら憚りなく、そして満面の笑みで、酒と共に歓談する人々を沢山知っているから、「それに比べれば全然マシ」と思ってしまう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゴールドマンとシティ、パリの従業員を在宅勤務 爆破

ワールド

英企業、エネ価格急騰で値上げ加速へ 雇用削減見込む

ビジネス

テスラの中国製EV販売、2四半期連続増 3月単月も

ワールド

台湾、東沙諸島の防衛強化へ 中国の活動活発化で=政
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
特集:日本企業に迫る サステナビリティ新基準
2026年4月 7日号(3/31発売)

国際基準の情報開示や多様な認証制度──本当の「持続可能性」が問われる時代へ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イラン恐怖」の正体
  • 3
    中国がイラン戦争最大の被害者? 習近平の誤った経済政策と石油危機が奏でる「最悪なハーモニー」
  • 4
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 5
    年金は何歳からもらうのが得? 男女で違う「最適な受…
  • 6
    人口減の自治体を救う「小さな浄水場」──誰もが常に…
  • 7
    北京に代わる新都市構想は絵に描いた餅のまま...大幅…
  • 8
    カンヌ映画祭最高賞『シンプル・アクシデント』独占…
  • 9
    「え、なんで?」フライト中に操縦席の窓が覆われて…
  • 10
    初の女性カンタベリー大主教が就任...ウィリアム皇太…
  • 1
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅」企業が救う、ウクライナの未来
  • 2
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 3
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 4
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 5
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 6
    攻撃開始日も知っていた?──イラン戦争を巡る巨額取引…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 9
    なぜイスラエルは対イラン戦争を支持するのか...「イ…
  • 10
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「根底にあるのは怒り」...日本の「3Dプリンター住宅…
  • 5
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 8
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 9
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 10
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中