広告ブロック利用の急増に悩む新聞界──被害額は年218億ドルにも達する
広告ブロックの利用が広がれば、出版社にとってはデジタルの広告収入が減り、読者がフェイスブックやアップルなどの大手プラットフォーム上でニュースを読む傾向を加速させる可能性がある。フェイスブックはインスタント・アーティクルズを通じ、アップルはアップル・ニュースを通じて、それぞれのサービス内でニュースが直接読めるようにしてあるからだ。
囲い込み化を歓迎するフェイスブックやアップルとは異なり、オープンなウェブ空間での広告収入に依存するグーグルにとって、広告ブロックは脅威だ。AdBlock Plusを提供するアイオー社にお金を払い、自社が提供する広告の一部を「ホワイトリスト化」(広告を遮断されないようにすること)する手段を取っている。
広告主や「広告ネットワーク」(広告媒体のウェブサイトを多数集めて「広告配信ネットワーク」を形成し、その多数のサイト上で広告を配信する手法)にとっては望む対象者にリーチできなくなり、利用者からの情報を取得することもできなくなる。
広告ブロック自体を遮断するソフトウェアや誰が広告ブロッカーを使っているかを調査するソフトウェアも販売されているが、WAN-IFRAは合法性に疑問を呈している。
出版社の対処方法は
出版社にはいくつかの対処法がある。
例えば「広告表示や搭載時間を向上させる」、「広告ブロックを利用する場合、閲読を有料で行ってもらうようにする」、「まだ広告ブロックがそれほど浸透していないモバイルでの閲読を勧める」など。記事と同じ体裁で制作・表示される広告、いわゆる「ネイティブ広告」も選択肢の1つだ。
ノルウェーのヴェルデンス・ガング紙はウェブサイトの読者の中で、同紙のサイトをホワイトリスト化していない2万5000人に調査を試みた。48%が搭載時間が早まればホワイトリスト化を考慮する、47%が動く広告が無くなれば考慮する、28%がポップアップ広告が無くなれば考慮すると答えた。同紙は今後も、読者との対話を進めながらサイトの利用環境を向上させる予定だ。
ドイツのビルト紙は昨年10月から、広告ブロックをする読者にはコンテンツを読ませないようにする仕組みを導入した。読者には広告ブロッカーの利用を停止してもらう、あるいはビルトのサイトをホワイトリスト化してもらう、あるいは毎月2・99ユーロ(約342円)を払って広告をやや少なくしたサイトを閲読してもらうようにした。導入後一か月で、それまでは広告ブロックの利用率が23%であったのが、一ケタ台に減少した。