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ドキュメンタリー

スターダムを駆け上ったビリー・アイリッシュは......これからもきっと大丈夫!

This Teen Star Should Be OK

2021年04月03日(土)11時00分
カール・ウィルソン

俳優の父と俳優兼ミュージシャンの母親の下で育ったアイリッシュは、共作者である兄(左)とステージでも共演 APPLE

<恋愛、創作風景に持病──若きポップスターの素顔に迫る『世界は少しぼやけている』は家族の在り方も印象的>

ビリー・アイリッシュ(19)と母親のマギー、レコード会社インタースコープの担当者チェルシー・ドッドソンの間に緊張が走るのは、ドキュメンタリー『ビリー・アイリッシュ/世界は少しぼやけている』の開始から約40分たった頃。原因は麻薬だ。

今をときめくポップスターは当時17歳。制作中だったデビューアルバム『ホエン・ウィ・オール・フォール・アスリープ、ホエア・ドゥ・ウィ・ゴー?』が配信やヒットチャートやグラミー賞で片っ端から記録を塗り替えるのは、まだ少し先の話だ。

「緊張が走る」といっても、アイリッシュが薬物を使ったわけではない。3人はパソコンで、アイリッシュと兄で共作者のフィニアス・オコネルが、薬物使用に反対する内容の曲「ザニー」について語り合う映像を見ている。

映像の中のアイリッシュが薬物やたばこに手を出すのは「自滅行為」と断言するのを見て、ドッドソンがやんわり尋ねる。本当にそう言い切っていいの? 大人になって気が変わり、薬物を使ってばれたら? 偽善者とバッシングされるかもしれない―--。

一理あるとアイリッシュはうなずくが、母親は憤慨する。「将来、薬物やたばこをやるかもしれないって理由で、今のビリーに本心を表現するなと言うの?」とドッドソンに抗議し、娘に向き直る。

「あなたと同じような若い歌手は必ずそういうものに手を出すの? だから自分が将来手を出してもたたかれないように、予防線を張っておこうってこと? 何のために親が付いていると思っているの? あなたが身を滅ぼさないように、これだけ大勢の人が支えているんじゃないの」

アイリッシュはティーンエージャーらしくニヤニヤしながら小言を聞いている(絵文字のように喜怒哀楽が出る表情も、彼女の魅力だ)。この場面は結論を出さずに終わるが、アイリッシュは今も反ドラッグの立場を貫いている。

両親が業界人の安心感

アップルTV+で2月26日に公開されたR・J・カトラー監督の『世界は少しぼやけている』は、アイリッシュが彗星のごとくスターダムを駆け上った数年の軌跡を2時間20分でたどる。大人の視聴者の胸には、ある疑問が渦巻くはずだ。すなわち「この子はこの先、大丈夫なのか」。

本作では触れていないが、アイリッシュにとって薬物絡みの事件はひとごとではない。2018年6月に抗不安薬の乱用で知られた友人のラッパー、XXXテンタシオンが20歳で射殺され、犯人には麻薬関連の逮捕歴があった。しかし若い黒人ラッパーの命を奪う苛酷な環境は、10 代の白人スターの世界とは大きく違う。

むしろ視聴者がアイリッシュに重ねるのは、年若くして名声をつかんだ子役や歌手だろう。

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