幼い息子が癌で目を失った......スマホの写真から病気を発見するアプリを父親が開発
Eye Cancer App for Kids
生後12日目で兆候あり
開発チームの1人、米べイラー大学のブライアン・ショー准教授(化学・生化学部)は次のように語る。「網膜芽細胞腫は、早期発見が視力と命を救うカギになる。親と(彼らが子供を撮影する)カメラは、これらの疾患を検査して命を救う最前線の盾となる。子供の写真をたくさん撮れば、問題があった場合に、このアプリで見つけやすくなるだろう」
かなり初期の白色瞳孔も検出できると、ショーは言う。「かすかに『灰色っぽい』瞳は、私が裸眼で写真を見ても、気が付かないだろう」
ショーの息子ノアは現在11歳。生後4カ月の時、両目とも網膜芽細胞腫と診断された。「残念ながら、気が付くのが遅過ぎた。右の眼球を摘出し、左は陽子線治療で助かった。後から考えれば癌の兆候は最初からあった」と、ショーは言う。「生後12日目の写真を調べてみると、白色瞳孔が現れていた。そこで、普段の写真から白色瞳孔を検出できるアプリの開発を目指した」
【参考記事】がん治療により効果的で安全な薬を開発する、特許取得済みAIシステム
家族写真から子供の目の癌の兆候を探すことは胸が痛む。無邪気なかわいい子供と愛する家族が、1歳の誕生会だったり、おばあちゃんに抱かれていたり、食事の練習をしたりしている。みんな幸せそう──とショー。
「でも、そんな子供の瞳に進行性の癌の兆候があり、一緒に写真に写っている人は誰も知らないのだ。開発中に、仲間である1人の子供が亡くなった。今回の論文を彼にささげる」
ウォータールー大学(カナダ)の検眼学・視覚科学科のリサ・クリスチャン准教授は、アプリの使い方が簡単だと感心する。ただし、間違った陰性判定が親を誤信させかねないとも危惧している。
生後6カ月から専門的な検眼を受ければさまざまなケアができると、クリスチャンは語る。アプリで異常が検出されたら眼科を受診するのはもちろんだが、それ以外にも気になることがあれば、なるべく早く医師に相談すべきだろう。
※10月23日発売号は「躍進のラグビー」特集。世界が称賛した日本の大躍進が証明する、遅れてきた人気スポーツの歴史的転換点。グローバル化を迎えたラグビーの未来と課題、そして日本の快進撃の陰の立役者は――。
[2019年10月22日号掲載]