新型コロナが重症化してしまう人に不足していた「ビタミン」の正体
新型コロナウイルス感染症では、サイトカインストームから急性呼吸窮迫症候群(肺炎や敗血症などにより重症の呼吸不全をきたす病気、ARDS)を合併し、致死的な経過をたどることが報告されています。
一方で、ビタミンD欠乏症はARDSの一因となることもわかっています。そして、その致死率は、年齢と慢性疾患の併存とともに増加し、どちらも血中ビタミンD濃度の低下に関連すると報告されています。
現時点では、ビタミンDが新型コロナを予防するという確固たるデータはありません。しかし、ビタミンDの持つ免疫調整作用が維持されていれば、サイトカインストームによる致死的な合併症を予防する可能性は十分にあると考えられます。
新型コロナ重症者は明らかに血中ビタミンD濃度が低かった
アイルランドからは、年齢40歳以上の新型コロナ罹患患者33名について経過を調べた報告が出されています。12名は重症化し、ARDSとなり、さらに、このうちの4名が亡くなられていますが、8名は回復しています。21名は重症化せずに回復の経過をたどっています。
図表2は、これらの2つのグループの患者の血液中のビタミンD濃度の平均値を比べたものです。ARDSを合併した12名の方が、明らかに血中ビタミンD濃度が低い傾向が見られます。
よく見ると、軽症群(グラフ左側)でも血中ビタミンD濃度は「16.4ng/ml」ですから、低いことがわかります。アイルランドは緯度の高いところに位置するため、血中ビタミンD濃度を維持することが難しいという事情が関係しているのかもしれません。冬の期間はビタミンDを摂取することを、国が推奨しているということです。