最新記事
サッカー

FCバルセロナ、中央アジアで新たな疑惑。アカデミー開校の裏にロシア系資金と縁故主義!?

Soccer School Sparks Controversy

2023年9月30日(土)17時05分
コリーン・ウッド
FCバルセロナ

Piotr Piatrouski-Shutterstock

<スペイン国内で贈収賄の疑いがかかるサッカーの名門クラブだが、キルギスでも独立系メディアがバルサが関連する腐敗問題を追及している>

8月30日、中央アジアのキルギスで興味深いサッカーの試合が行われた。この地域を代表する往年の名選手が集った「レジェンズ・オブ・アジアXI」と、スペインの名門クラブであるFCバルセロナ(バルサ)の元スター選手でつくる「バルサレジェンズ」が対戦。試合はバルサレジェンズが3-0で勝った。

【ハイライト映像を見る】「レジェンズ・オブ・アジアXI」と「バルサレジェンズ」の試合

会場には、バルサのジョアン・ラポルタ会長の姿もあった。そう、この試合は単なる興行ではない。バルサの少年少女向けサッカースクール「バルサアカデミー」をキルギスに開校するプロジェクトを祝うものだった。

バルサアカデミーは6~18歳に、世界に冠たるバルサのサッカーを教える場。2019年時点の発表によれば、23カ国に49校がある。

キルギスでは8月に南部のジャララバードに開校し、首都ビシュケクでもう1校の建設が進む。ビシュケクのアカデミーには多くのピッチのほか、7階建てのクリニックやホテル、カフェが造られる。

建設費用は約1億1300万ドル。キルギスのサディル・ジャパロフ大統領は国営カバル通信とのインタビューで、「資金は全て民間のもの」と語った。

だが、具体的にどこが資金を提供するのか。腐敗を執拗に追及することで知られる独立系報道機関「クループ」が、この問題を調査した。

それによると、ビシュケクのアカデミーの建設費用の出どころはまだ不明だが、既に完成したジャララバードのアカデミーはスポーツ関連地元企業のジャルグループ・アジア社が営業販売権を取得したという。この資金調達で中心的役割を果たしたのが、ロシア国籍のニコライ・コロボフスキーという人物だった。

超富裕層相手に荒稼ぎ

コロボフスキーはジャルグループ・アジアの共同オーナーであり、もう1人のオーナーの姓はジャパロフの妻と同じだ。コロボフスキーはキルギス国内にいくつかの鉱山と電力会社を保有。原発建設を手がけるロシアの国営企業ロスアトムともパイプがある。

クループがジャララバードのアカデミーについて書いた記事は、8月22日に公開された。するとキルギスの検察当局は、クループのサイト閉鎖に向けて動いた。

ジャパロフもクループを公然と批判している。カバル通信の取材では、クループの「自称ジャーナリストたち」は「キルギス国民にとって有害なだけで、1ミリの利益ももたらしていない」と一蹴。こうした報道はキルギスへの投資を妨げると述べた。

そんな彼は、アカデミーの建設に「国家安全保障委員長の一族や自身の一族が参加」しているとあっさり認めている。

インタビュー
現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ「日本のお笑い」に挑むのか?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中