最新記事

セレブ

マイケル・ジャクソンのボディーガードだった私が見たセレブたちの素顔

I Was a Bodyguard for VIPs

2021年10月20日(水)21時54分
サイモン・ニュートン(俳優、元ボディーガード)
マイケル・ジャクソンとボディガード

ロンドンを訪れたマイケル・ジャクソンを警護 GETTY IMAGES

<兵士として赴いたイラクで準軍事会社にスカウトされ、王族やセレブの警護で稼いできたが、今は俳優に挑戦中>

兵隊さんになるんだと、子供の頃から決めていた。だから19歳で英国陸軍に入隊した。でも5年後、イラクに駐留していたときにアメリカ系の民間警備会社から誘いを受け、それで転職した。

それから3年ほど、イラク各地で民間の警備請負業者として働いた。もちろん危険がいっぱいだった。同じ宿舎に滞在していた仲間の多くは、仕事に行ったきり二度と戻ってこなかった。それからアフガニスタンに移り、英国政府の関連機関で働いた。

2006年に休暇で実家に戻っていたとき、ロンドンで仕事があると誘われた。アメリカから来て、10日間滞在する客人がいる、名前は言えないが、明日からボディーガードをやってくれないか。もちろん、私は引き受けた。翌日、空港で「客人」の顔を見た。マイケル・ジャクソンだった。

マイケルはその年のワールド・ミュージック・アワードに招かれていて、宿泊先はロンドン市内の某有名ホテル。当然、世界中からやって来たファンが同じホテルに泊まり、ロビーで一目でも会えるチャンスを狙っていた。みんなタクシーを待機させていて、私たちが出掛ければ、すぐに追い掛けてきた。

幸いなことに、マイケルは無用な外出を好まなかった。そういう男だった。

穏やかで冷静で礼儀正しい紳士

でもワールド・ミュージック・アワードの当日は、さすがに部屋に閉じ籠もってもいられない。やむを得ず強行突破でホテルを出て、会場内には車で突っ込んだ。規則違反だが、ほかに手がなかった。ファンだけでなく、ミュージシャンたちもマイケルに会いたくて詰め掛けていたからだ。

でも、マイケルは一貫して紳士だった。穏やかで冷静、礼儀正しかった。何があっても、慌てず騒がず。私たちが不快な思いをすることは一度もなかった。

その後は戦場に戻り、アフガニスタンで1年半を過ごした。その後の2年間はロンドンで、ドバイの首長一族の警備チームに参加。その後の数年は、ペルシャ湾を行き来する石油タンカーを正体不明の海賊から守る仕事をした。

その間に、実は自分の警備会社を立ち上げていた。13年にはロンドンに戻り、ファッションモデルなどの身辺警護を始めた。あのケイト・モスの自宅を警備したこともあるし、一時はナオミ・キャンベルの御用達でもあった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中