最新記事

テクノロジー

「4000冊の蔵書が一瞬で吹っ飛んだ」 電子書籍の落とし穴 ── あなたは購入していない

2021年9月26日(日)19時38分
三上 洋(ITジャーナリスト) *PRESIDENT Onlineからの転載
書店と電子書籍リーダー

urfinguss - iStockphoto

<紙の書籍と電子書籍には決定的な違いがある。ITジャーナリストの三上洋さんは「紙の書籍は所有物だが、電子書籍には所有権はない。あくまでも『利用権の購入』なので、規約違反などでアカウントが停止されれば、すべての蔵書を一瞬で失うことになる」という──>

アマゾンKindleに保存した4000冊の本が突然読めなくなった

2021年8月下旬に「Kindleの4000冊の蔵書が吹っ飛んだ」という匿名の投稿が話題になりました。投稿者は、Amazonギフト券をほかから安く買って定期的に使用していたことから、Amazonアカウントが永久凍結され、結果としてKindleにあった約4000冊もの電子書籍が消失してしまったというのです。

匿名記事とは言え、実際にありえる話です。Amazonの規約には、不正利用やギフト券の不正使用などがあった場合、アカウントを停止すると書かれています。もしAmazonアカウントが停止されれば、Kindle用の電子書籍が一切読めなくなってしまうのです。

この記事の「ほかから安くAmazonギフト券を買った」ことが不正にあたるのかは後述しますが、いずれにしてもAmazon側が不正だと認めれば私たちの電子書籍は消失してしまうことになります。

電子書籍は「利用権」を買っているだけ
もしこの記事の筆者がKindleではなく紙の本で買っていたら、Amazonは「本を返せ」とは言いません。当たり前のことですが、紙の本を買うことは所持することであり「所有権」は購入者にあるからです。

それに対して電子書籍のほとんどはそのプラットフォーム(Amazonなどの提供者)上で読むことができる「利用権」を販売しています。つまりユーザーはそこで読む権利があるだけで、電子書籍そのものは所持していないのです。

電子書籍と紙の書籍の比較

そのためAmazonアカウントが何らかの理由で停止されてしまうと、Kindleの蔵書すべてが読めなくなってしまいます。手元に残る紙の本に比べると、アカウント停止によるリスクがあります。

また電子書籍には、サービス自体の終了というリスクもあります。電子書籍ストアの終了についてまとめている記事「電子書籍はサービス終了したら読めない?対応事例一覧と最善の対策方法(to be SOLDOUT)」によると、これまでに10社以上のサービスが終了しています。

電子書籍ストアがサービス終了すれば、そこで読めた電子書籍は読めなくなります。その代わり、他社への移管、ポイントなどでの返金、アプリへのダウンロードといった何らかの補償が行われるのが一般的です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

基調物価「2%に近づいている」、コア指標など3手法

ワールド

英住宅ローン承認件数、2月は3カ月ぶり高水準 今後

ワールド

高市首相、赤沢氏を重要物資安定確保担当相に任命 対

ワールド

銀行の内部信用リスクモデル、ECBが変更の承認迅速
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:BTS再始動
特集:BTS再始動
2026年3月31日号(3/24発売)

3年9カ月の空白を経て完全体でカムバック。世界が注目する「BTS2.0」の幕開け

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 2
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度を決める重要な要素とは?
  • 3
    ビートルズ解散後の波乱...「70年代のポール・マッカートニー」を再評価する傑作映画『マン・オン・ザ・ラン』
  • 4
    ロシア経済を支える重要な港、ウクライナのものと思…
  • 5
    オランウータンに「15分間ロックオン」された女性のS…
  • 6
    【銘柄】東京電力にNTT、JT...物価高とイラン情勢に…
  • 7
    ヒドラのように生き延びる...イランを支配する「革命…
  • 8
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    カタール首相、偶然のカメラアングルのせいで「魔法…
  • 1
    ヘンリー・メーガン夫妻の豪州訪問に3万6000人超の反対署名...「歓迎してない」の声広がる
  • 2
    「水に流す」日本と「記憶する」韓国...気候と地理が育んだ「国民意識の違い」とは?
  • 3
    三笠宮彬子さまも出席...「銀河の夢か、現実逃避か」モナコ舞踏会に見る富と慈善
  • 4
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 5
    中国の公衆衛生レベルはアメリカ並み...「ほぼ国民皆…
  • 6
    記憶を定着させるのに年齢は関係ない...記憶の定着度…
  • 7
    中国最大の海運会社COSCOがペルシャ湾輸送を再開──緊…
  • 8
    イランは空爆により核・ミサイル製造能力を「喪失」…
  • 9
    映画『8番出口』はアメリカでどう受け止められた?..…
  • 10
    作者が「投げ出した」? 『チェンソーマン』の最終…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 6
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 7
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 8
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
  • 9
    米軍も防ぎきれないイランのドローン攻撃──イラン製…
  • 10
    縫いぐるみが相棒、孤独なサル「パンチくん」がバズ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中