日本で「食えている画家」は30~50人だけ 完売画家が考える芸術界の問題点

2021年9月2日(木)06時50分
中島健太(洋画家)

たとえば、2019年12月に行われたアメリカ最大級のアートフェア「アート・バーゼル・マイアミ・ビーチ(ABMB)」で、びっくりする作品が話題を呼びました。マウリツィオ・カテランが、本物のバナナを灰色のスコッチテープで壁に貼りつけた作品「Comedian」です。フェア初日に、この作品のふたつのエディションが約1300万円、3つ目のエディションには、約1600万円の値がつきました。

おいしい料理を作ることの重要性よりも、新しい料理を作ることの重要性のほうが海外マーケットでは高いのです。創作料理では、「泡みたいなフワフワなものが、なぜかフォアグラの味がする」なんていうところに価値がある。ですが、庶民感覚からすると、「おいしいフォアグラをそんなに食べたことがないから、できれば普通のフォアグラを食べたい」と思う。

僕自身は、泡々のフォアグラよりも普通のフォアグラを食べたほうがおいしいと思う感性です。「よくわからない絵だけれど、なんでこんなに高いんだろう」という理由づけが、僕はできなかった。自分で理由づけができないものを、自分が作れるとは思えなかったのです。

それよりも、わかりやすい写実絵画を描くことが、僕には価値がある。国内のマーケットは、非常に自分にとってリアリティがある場所なのです。

本書は目的を問わず、誰にでも芸術や業界のことがわかるように構成しています。特に次の方々には役立ちます。

●芸術をビジネスにしたい人
●絵が上手になりたい人
●芸術に興味がある人
●プロ画家を目指す人
●アーティストという働き方に興味がある人

「現代の芸術とは何か」「これからアーティストを目指すにはどうしたらいいのか」「芸術をビジネスにするには何をすべきか」などを考えるきっかけになれば、幸いです。

完売画家
 中島健太 著
 CCCメディアハウス

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米国との建設的な対話に全面的にコミット=ゼレンスキ

ワールド

米、ロシアが和平合意ならエネルギー部門への制裁緩和

ワールド

トランプ米政権、コロンビア大への助成金を中止 反ユ

ワールド

ミャンマー軍事政権、2025年12月―26年1月に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
特集:進化し続ける天才ピアニスト 角野隼斗
2025年3月11日号(3/ 4発売)

ジャンルと時空を超えて世界を熱狂させる新時代ピアニストの「軌跡」を追う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題に...「まさに庶民のマーサ・スチュアート!」
  • 3
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMARS攻撃で訓練中の兵士を「一掃」する衝撃映像を公開
  • 4
    同盟国にも牙を剥くトランプ大統領が日本には甘い4つ…
  • 5
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 6
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 7
    テスラ大炎上...戻らぬオーナー「悲劇の理由」
  • 8
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 9
    ラオスで熱気球が「着陸に失敗」して木に衝突...絶望…
  • 10
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 1
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 2
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 3
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 4
    アメリカで牛肉さらに値上がりか...原因はトランプ政…
  • 5
    イーロン・マスクの急所を突け!最大ダメージを与え…
  • 6
    「浅い」主張ばかり...伊藤詩織の映画『Black Box Di…
  • 7
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 8
    ニンジンが糖尿病の「予防と治療」に効果ある可能性…
  • 9
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 10
    著名投資家ウォーレン・バフェット、関税は「戦争行…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 10
    細胞を若返らせるカギが発見される...日本の研究チー…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中