最新記事

カルチャー

「オタ活」がはらむリスクに無自覚な若者たち──オタクコミュニティの残念な現実とは

2021年1月4日(月)16時40分
廣瀨 涼(ニッセイ基礎研究所)

高額消費をしているのは経済基盤のしっかりした大人かもしれない Manakin-iStock

<同じ趣味嗜好を持っていても、オタクの実社会におけるステータスは人によって大きく異なる。経済基盤のない若いオタクがそこで高額消費マウンティングに巻き込まれた末路には>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年10月5日付)を要約して転載したものです。

オタクの活動の場は時代の流れとともに変化している。インターネットの登場により、「2ちゃんねる」のような大型匿名掲示板での交流が、オタクの情報交換の場の中心となった。

2ちゃんねるは、オタクたちの情報が集約される集合知のような機能を果たしていたが、匿名性ということもあり、誹謗中傷が蔓延していた。併せて掲示板のコンテクストを把握することや、自分で情報を最低限収集する必要を強いられる事が利用の障壁となっており、コミュニティへの参加者を、ふるいにかけることができていた。

しかし、SNSの登場により、この障壁は消滅した。特にTwitterは、情報が即時に発信消費されることもあり、オタクの新たな情報収集の場として定着した。Twitterは2ちゃんねるとは異なり比較的実社会の延長としての位置づけとして認識されており、気軽に利用できるプラットホームとなっている。そのためTwitterを用いて、オタクも容易に自身の趣味嗜好と合う他のユーザーと繋がることができるようになった。

SNSのオタクコミュニティ

SNSに存在するオタクのコミュニティの特徴として、コミュニティの境界線が明確ではないことが挙げられる。例えばTwitterというプラットホームには、数えきれないほどの同じ嗜好を持つ者が存在している。一般にコミュニティは共通の意識を持った人々が集まる母体に参加することでコミュニティに身を置くこととなる。

しかし、Twitterには同じ嗜好を持つ人々を集約させる母体の機能が存在しないため、各ユーザーは自身で繋がりたい対象を見つけて、自らコミュニティを形成する必要がある。この一個人の繋がりを狭義のコミュニティと捉える事ができる。

ユーザーの数だけこの狭義のコミュニティは存在し、互いに重なり合っているため、間接的に他のオタクとの繋がりを持つ事になる。この間接的な重なりも同じ趣味嗜好を持つ者との接点であるため、自身が確認できない広い範囲にオタクのコミュニティは広がっており、無自覚ではあるもののその大きなコミュニティに身を置く事になる。

そのため、投稿の公開範囲を制限しない限り、常に自身の知らないオタクに投稿を晒すこととなる。そこには、当然リスクが存在しており、オタクとしてあるまじき姿を投稿してしまうと、自身の知らないオタクたちの眼までその投稿が拡散され、炎上する事もある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

GMメキシコ工場で生産を数週間停止、人気のピックア

ビジネス

米財政収支、6月は270億ドルの黒字 関税収入は過

ワールド

ロシア外相が北朝鮮訪問、13日に外相会談

ビジネス

アングル:スイスの高級腕時計店も苦境、トランプ関税
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「裏庭」で叶えた両親、「圧巻の出来栄え」にSNSでは称賛の声
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 5
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 6
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 7
    セーターから自動車まで「すべての業界」に影響? 日…
  • 8
    トランプはプーチンを見限った?――ウクライナに一転パ…
  • 9
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 10
    『イカゲーム』の次はコレ...「デスゲーム」好き必見…
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に...「曾祖母エリザベス女王の生き写し」
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 6
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 7
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 8
    アリ駆除用の「毒餌」に、アリが意外な方法で「反抗…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中