最新記事

ヘルス

アメリカの10代の50人に1人は「慢性疲労症候群」

慢性疲労症候群(CFS)に対する数々の偏見が多くの若者を苦しめている

2016年1月26日(火)16時23分
ルーシー・ウェストコット

疲労と病気の境は アメリカでは100万人以上がCFSの診断を受けている Tyrone Siu-REUTERS

 現代のティーンエイジャーは、多大なストレスやプレッシャー、厳しい要求に直面している。そのため、子供が相当疲れているように見えても、周囲はそれをいつものことと見過ごしてしまいがちだ。だが実際には、それが病気である場合もる。疲労と病気の分かれ目はどこにあるのだろうか?

 1月25日付けの医学誌「ペディアトリックス」に発表された英国ブリストル大学の研究グループによれば、10代の若者たちの間では「慢性疲労症候群(CFS)」はもはや珍しくないという。16歳の男女の50人に1人がCFSを患っており、症状は半年以上に及ぶ。この結果は、16歳だけでなく10代全体に当てはまるだろうと研究グループは指摘する。

 この研究は、同大学が行った「Avon Longitudinal Study of Parents and Children(親と子供に関するエイヴォン長期研究)」の調査結果に基づいている。研究グループは、5756人の被験者が記入した問診票のデータを検証した。

金持ち病と思われてきたが

 その結果、いくつかの傾向が明らかになった。女子がCFSの症状を訴える傾向は男子のほぼ2倍だった。また、貧しい家庭の子供のほうがCFSの症状を訴える傾向が強かった。これは驚きだ。CFSはこれまで、恵まれた中産階級のわがまま病だと思われてきたからだ。本誌も1990年、この病気は「ヤッピー風邪」と呼ばれていると書いている。

 米疾病対策センター(CDC)によると、アメリカでは100万人以上がCFSの診断を受けている。いまのところ完治の方法は見つかっておらず、治療には抗うつ剤や睡眠薬などが処方されたり、心理カウンセリングが行われたりしている。鍼治療やマッサージなどの代替医療を試す患者もいる。多くの専門家は、健康的な食生活を送る、運動プログラムをきっちりと守る、睡眠時間を増やすなど、生活習慣の改善を推奨している。

 CFSは別名を「筋痛性脳脊髄炎(ME)」と言い、症状は慢性的な疲れだけではない。患者の多くは、めまいや立ちくらみ、気分の落ち込み、不安、筋肉・関節の痛み、頭痛、衰弱、痛覚過敏などの症状を訴える。

 一部の専門家たちは、疲労を通り越した極端な症状は、線維筋痛や慢性偏頭痛、むずむず脚症候群、過敏性腸症候群など、別の病気を併発しているせいだと主張する。今回の研究では、被験者の67パーセントが、うつ病と共通の症状を訴えていることがわかった。

医師を訪ねた患者の94%が門前払い

 患者がCFSの診断を受けるまでには長い時間がかかることもある。医師に相手にされなかったり、誤診されたり、あるいは心因性のものだと言われたりするためだ。ブリストル大学の研究グループによれば、CFSを患う10代の94パーセントが医師に門前払いをされていることがわかった。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国軍、台湾周辺で実弾射撃伴う演習開始 港湾など封

ビジネス

韓国クーパン、顧客情報大量流出で11.8億ドルの補

ワールド

尹前大統領の妻、金品見返りに国政介入 韓国特別検が

ビジネス

日経平均は反落、需給面での売りが重し 次第にもみ合
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中