社会に出たら学ばない──日本人の能力開発は世界最低レベル
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<グローバル化とAI化の時代を生き抜くために、現役ビジネスパーソンは何をすべきか。まずは「知識」を得る方法を変えよと、元外交官のコンサルタントは言う>
グローバル化とAI(人工知能)化は、今後ますます日本のビジネスパーソンにとって脅威になる。そう言われても、戸惑う人は少なくないだろう。頭では分かっていても、目の前の仕事に追われる毎日の中で、どう対処すればいいか分からない。
1853年にペリーの黒船が来航し、それからわずか15年で260年続いた江戸幕府が滅んだ。当時「江戸幕府は未来永劫続くとほとんどの人が思い込んで」いたが、現在も同様で、多くの日本人が「『まあ、なんとかなるでしょう』とグローバル化とAI化の動きをさほど深刻にはとらえていない」と、元外交官で、グローバルリーダー開発を本業とするトレーナーの山中俊之氏は言う。
これまで4万人に及ぶ国内外のリーダーやその候補と、研修やコンサルティング、大学講義、グローバルビジネス、外交の現場で向かい合ってきた山中氏によれば、手立てはある。「自らの人材としての開発戦略を大きく変え、自らの市場価値を上げ、世界に通用する人材に」なるために、6つの習慣を身につければいいというのだ。
山中氏は新刊『世界で通用する「地頭力」のつくり方――自分をグローバル化する5+1の習慣』(CCCメディアハウス)の中で、その6つの習慣を現役世代のビジネスパーソンに向けて体系立てて説明している。6つの習慣とはすなわち、「情報」「知識」「ワークスタイル」「コミュニティ」「オフ」「英語」を"変える"ことだ。
これらを"変える"とは、どういうことか。ここでは本書から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。第1回は「第2の習慣 『知識』を変える」より。
社会人になってから学び続けない日本人ビジネスパーソンの能力開発は世界最低レベル
一流といわれる大学を卒業して一流といわれる企業や官庁に勤務している人の話を聞くと、日常業務に埋没して能力開発に時間を割けていない様子がよく見受けらます。長年の低成長時代に人員削減が行われ、マネジメントクラスは忙しすぎて、そのような余裕がない状況に置かれていることも要因です。自主的に勉強することをせず、研修も受け身、それなのに居酒屋では上司への恨み言......。そんなビジネスパーソンや公務員が残念ながら多いのです。
日本のビジネスパーソンが学んでいないことはデータでも裏づけられています。大学入学者の中で社会人経験があると推定される25歳以上の割合は、日本は2%程度であり、OECD諸国の平均が20%程度であるのと比較してはるかに低くなっています(文科省およびOECD資料)。この数値から、大学卒業後に大学や大学院に入って学び直す人が少ないことがわかります。
また、企業研修においても、米国の大企業では1人あたり平均1000ドル以上かけることが多いといわれる一方で、産労総合研究所によると、日本では4万円台とされます。このように世界水準で見ると日本人ビジネスパーソンの能力開発への投資は大変に遅れているという事実をまず認識することが重要です。
特別背任で有罪になり、服役した経験を持つ大王製紙前会長の井川意高氏は、次のように述べています。
「私が持つ知識の量は、東大時代が人生のピークだったと思う。社会に出てからは、アウトプットするばかりでインプットする時間があまりにも乏しかった」(堀江文・井川意高『東大から刑務所へ』幻冬舎)
その反省から獄中でたくさんの本を読んだとのことです。日本では、勉強とは大学や高校までの学生時代に行うもの、という感覚がまだまだ強いのではないでしょうか。過去の学歴が大事なのではなく、今どんな新たな知識を身につけて成長をしているかです。知識のバージョンアップが求められているのです。