最新記事
農業問題

「令和の米騒動」その真相...「不作のほうが売上高が増加する」農水省とJAの利益優先で国民は置き去りに

2024年9月6日(金)18時44分
山下 一仁 (キヤノングローバル戦略研究所研究主幹) *PRESIDENT Onlineからの転載

【再来年も52万トン不足する】

では、次の期のコメの需給はどうなのだろうか?

この期間の供給の主体となる今年産の供給量もコメの需要が毎年10万トンずつ減少するという前提で減反しているとすれば、基準年に供給された2022年産(670万トン)に比べ20万トン少なくなるはずである。

しかし、根拠は明らかではないが、農林水産省は669万トンになるという見通しを公表している。農林水産省の見通しが正しいとすれば、基準年に比べ供給量は1万トンの減少となる。 


 

インバウンドの需要が今年と同様であるとしても、基準年比では11万トン増である。つまり今年産米が農林水産省の見通し通りだったとしても、基準年より12万トンの不足(減反を予定通り行っているとすれば31万トンの不足)がある。これに今年産米を先(早)食いした40万トンの不足が加わる。

減反を考慮しなくても次の期の不足は52万トンとなる。

【猛暑の影響でさらに不足が拡大する】

さらに、今年産のコメが猛暑の影響を受けるかどうかは、これからわかる。

胴割れ米等が起きるのは穂が出てから10日間に高温にさらされていたかどうかである。今年も昨年並みの高温だった。また、台風の影響により、イネの倒伏や日照不足による不十分な登熟が起きる可能性がある。

今年も昨年と同様の被害を受けているとすれば、不足は72万トンとなる。一等米の比率は年々低下しているので、これでは済まないかもしれない。

この不足分を来年産から早食いするとすれば、その次の期に不足は持ち越される。永遠に不足が続く。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米肥満薬開発メッツェラ、ファイザーの100億ドル買

ワールド

米最高裁、「フードスタンプ」全額支給命令を一時差し

ワールド

アングル:国連気候会議30年、地球温暖化対策は道半

ワールド

ポートランド州兵派遣は違法、米連邦地裁が判断 政権
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 2
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216cmの男性」、前の席の女性が取った「まさかの行動」に称賛の声
  • 3
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 6
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 7
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 8
    【銘柄】元・東芝のキオクシアHD...生成AIで急上昇し…
  • 9
    なぜユダヤ系住民の約半数まで、マムダニ氏を支持し…
  • 10
    長時間フライトでこれは地獄...前に座る女性の「あり…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 5
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 8
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 9
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 10
    米沿岸に頻出する「海中UFO」──物理法則で説明がつか…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中