最新記事

ネット規制

グーグル提訴は序の口 IT企業の搾取的ビジネスモデルをどう規制するか

Time to Regulate Big Tech

2020年10月26日(月)17時05分
ディパヤン・ゴーシュ(オバマ前政権のテクノロジー・経済アドバイザー)、ルーリー・セイニー(元米民主党上院議員スタッフ)

グーグルの提訴をIT業界の搾取的ビジネスモデルの規制につなげなければならない BRIAN SNYDER-REUTERS

<フェイスブックなどの暴走を止めるには、GDPRのようなプライバシー保護の仕組みが必要。米規制当局は次に、インターネットの透明性も高めなければならない>

米司法省は10月20日、ネット検索と広告の分野で公正な競争を妨げているとしてIT大手のグーグルを反トラスト法(独占禁止法)違反の疑いで提訴した。市場の独占を武器に社会を食い物にしてきたとされる巨大企業の精査は、世界的に歓迎すべき動きだ。

アメリカは過去10年間にインターネット上で表面化した最大の課題に対処するため、ネット規制の包括的アプローチを推進しなければならない。今回の提訴は重要な動きだが、法の網が捉えるべきはグーグルのみではない。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)によって、ネット規制の重要性はさらに高まっている。新型コロナは「仮想経済」への移行を加速させた。仕事や学校はかなりの部分がオンラインに移行。遠隔医療サービスは拡大した。ネットショッピングは急増した。

私たちの生活は根本的に変わるのか。新しい日常はどんなものなのか。答えはまだない。だが短期的に見れば、オンラインでの情報交換が世界中で拡大し、さまざまな企業や学校、保険会社などがより多くの個人情報を共有しつつあることは明らかだ。

こうした動きは全て、ほぼ規制ゼロのオンライン・プラットフォーム上で起きている。デジタルコミュニケーションが社会の基本サービスになりつつある今、私たちは誰が個人情報にアクセスして、それをどのように利用するのかを問う必要がある。

私たちは毎日同じソーシャルメディアやビデオ会議を使い、検索エンジンで調べものをする。その結果、これらのサービスを提供する企業は、競合他社を排除し、ますます経済的に強くなる。

EU並みのデータ保護を

さらに巨大IT企業は、データを吸い上げ、それを分析して売れる「情報」に仕立て、インターネットを自社の利益を最大化するために都合のいい空間に作り替えようとしている。私たちがネット上で何を見て、何を消費するかを独占的にコントロールしようとしているのだ。

今回の大統領選でドナルド・トランプ現大統領が再選されても、民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝利しても、アメリカの次期政権はこの緊急事態に対応しなければならない。議会と協力して、意味のあるネット規制法を成立させなければならない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国6社が香港上場、初値は概ね公開価格上回る 9億

ビジネス

ノボノルディスク、中国で肥満薬ウゴービ値下げ 特許

ビジネス

英オクトパスエナジー、テック部門クラーケンを分離 

ビジネス

午前の日経平均は小幅続落、年末のポジション調整
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 2
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「サイエンス少年ではなかった」 テニス漬けの学生…
  • 5
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 6
    「すでに気に入っている」...ジョージアの大臣が来日…
  • 7
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それ…
  • 8
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 10
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中