最新記事

テクノロジー

グーグル新体制は株主の目をそらす煙幕?

持ち株会社設立と組織再編を発表、無謀なベンチャー投資への風当たりは弱まるか

2015年8月21日(金)17時00分
ジェシカ・メントン

新会社アルファベットの設立を発表したグーグル Pascal Rossignol-REUTERS

 グーグルが持ち株会社「アルファベット」を設立して組織を再編するという先週の驚きの発表は、ウォール街ではおおむね肯定的に受け止められている。グーグルの新体制を、大富豪投資家ウォーレン・バフェットと彼の持ち株会社バークシャー・ハサウェイになぞらえる向きもあるほどだ。しかし、2社の投資手法には大きな違いがある。

 まったく利益が得られないかもしれないリスクの高いベンチャー企業に資金をどんどんつぎ込むグーグルに、投資家たちは気をもんできた。そんな投資家らの懸念を拭うために、持ち株会社を設立して本業の検索事業を事業子会社にする、という側面もあるかもしれない。

 グーグルは、第4四半期からグーグルとアルファベットの事業の決算を分けて報告するとしている。アルファベットのCEOにはラリー・ペイジ現グーグルCEOが、グーグルのCEOにはスンダー・ピチャイ現上級副社長が就任する。グーグルの共同創業者セルゲイ・ブリンとエリック・シュミット会長はそれぞれ、アルファベットの社長と会長に就く。

 バフェットは長らく、グーグルの事業の進め方に影響を与えてきた。グーグルは04年にIPO(新規株式公開)を行った際の株主向け書簡で、バフェットがバークシャーの株主に毎年宛てている手紙に触発されたことを明らかにしている。

「1つでも成功すればいい」

 だが両社の間には大きな差がある。基本的にリスクを嫌うバフェットは起業したての会社には食指を動かさず、多様な投資先を追求する。経営状態のよい会社しか選ばず、手元資金も豊富なバフェットの投資手法が疑問視されることはめったにない。

 一方のグーグルは、無人自動車開発などのベンチャーに投資し続けている。アルファベットは、「バフェットの衣をまとったベンチャーキャピタルだ」と、PSWインベストメンツの創設者フィル・デービスは指摘する。

 グーグルは核となる検索事業による利益の一部を、アルファベットの投機的なプロジェクトにつぎ込むだろう。ヒトの寿命を延ばすプロジェクトを進める「カリコ」のようなベンチャー企業に投資するグーグルに対し、投資家は厳しい目を向ける。

 アルファベットは成功しないとまでは言わないが、バフェットのポートフォリオと比べるとリスクが高い。「ペイジとブリンのしていることは非常にシリコンバレー的な投資だ。多くのアイデアにカネをつぎ込み、その中の1つでも成功してくれればいいと願っている」と、デービスは言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、エプスタイン氏自家用機8回搭乗 司法省

ワールド

米最高裁、シカゴへの州兵派遣差し止め維持 政権の申

ビジネス

銅価格、1万2000ドルの大台を突破し最高値 今年

ワールド

国連安保理、ベネズエラ情勢巡り緊急会合 米「最大限
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者・野村泰紀に聞いた「ファンダメンタルなもの」への情熱
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これまでで最も希望が持てる」
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 6
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 7
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 8
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 9
    なぜ人は「過去の失敗」ばかり覚えているのか?――老…
  • 10
    楽しい自撮り動画から一転...女性が「凶暴な大型動物…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中