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パックンの風刺画コラム Superpower Satire (USA)
筋金入りの反トランプ派だった男がトランプ陣営の副大統領候補に...その深層は?
©2024 ROGERS─ANDREWS McMEEL SYNDICATION
<トランプをたびたび罵倒してきたJ.D.バンスが副大統領候補に選ばれた背景にある「架け橋」戦略とは?ハーバード大卒芸人パックンが風刺画からアメリカの今を読み解きます>
風刺画が描くDonald Trump is America's Hitler!(トランプはアメリカのヒトラーだ!)以外にも、トランプを否定する言葉はある。トランプはアメリカで最も嫌われている悪党で、最もうざいセレブだ。大統領にふさわしくない。人を搾取する完全な詐欺師だ。有毒だ。不埒だ。ドアホだ。昔から彼のことは嫌いだから、僕はNever Trumper(永遠にアンチトランプ)だ!
こんな罵声をたびたび発してきたのが、貧困家庭育ち、元海兵隊、イラクに従軍し、エール大学卒で弁護士資格を持つJ.D.バンスだ。
しかし数年たつと、バンスは自身の上院議員選への立候補に備え、トランプに頭を下げに行った。すみません、メディアにだまされ、トランプさんのことを勘違いしていました!と、平謝りしてトランプの応援を乞うたそうだ。バンスの「永遠」は案外短い期間だったね。
7月15日、バンス上院議員はトランプに副大統領候補に抜擢された。バンスは共和党の全国大会で受諾演説を行ったとき、さすがに風刺画のようにヒトラー式敬礼でHeil Trump!(ハイル・トランプ!)とは言わなかった。
だが、「われわれはトランプ大統領を必要としている」「トランプ大統領はアメリカの最後の、最高の希望となる」などと、まさに救世主かのように熱くたたえた。大嫌いだったのに、今はバンスほどトランプが大好きな人はトランプ本人ぐらいだろう。
一体誰なら反トランプ派の心をつかめる?
もちろん、改心した人はほかにもいる。トランプについて「道徳が全くない」「詐欺師だ」「大統領に欲しくない特徴の塊だ」「地獄に落ちろ」などと昔、発信していた共和党の大物政治家たちが次々とネバートランプからオールウェイズトランプに変わっている。
その中にはマルコ・ルビオ上院議員やニッキー・ヘイリー元国連大使など、バンスと並んで「副大統領候補」と目されていた人たちもいる。
なぜトランプは自分のことをぼろくそに言っていた人物を副大統領候補にしたのか? トランプの側近によると、それは選挙戦略だ。トランプは暗殺未遂を乗り越えた直後に共和党の全国大会を成功させた。普通なら、こんな候補の支持率は大きく跳ね上がりそうなものだ。
だが、トランプの場合それがびくとも動かない。本来あるはずのプラス効果が表れない。国民の過半数は反トランプ感情が固いようだ。トランプは岩盤支持層以外の有権者への架け橋として、元ネバートランプ派の人を起用したかったのだという。
しかし、バンスが副大統領候補になってもトランプの支持率は上がっていない。バンスでも無理なら、一体誰が反トランプ派の心をつかめるのだろう? それは......カマラ・ハリスぐらいではないかな。