コラム

化学燃料タンクローリーに食用油を入れられても、抗議しない中国人の心理

2024年07月31日(水)18時29分
ラージャオ(中国人風刺漫画家)/トウガラシ(コラムニスト)

この政権にしてこの人民あり

権力者と悪徳業者がかばい合う社会で、権力のない普通の人々が頼れるのは自分だけ。他人に関心を持つ余裕も、抗議する気力もない。ゆがんだ社会で利己的な振る舞いは当たり前。この特徴を、台湾の作家・柏楊(ポーヤン)は著書『醜い中国人』で「利己的・劣等感の一面、傲慢で見えっ張り」と評した。

それは、わざわざ靖国神社にやって来て放尿や落書きをし、中国SNS上で「愛国心」を見せびらかす行為や、日本の原発処理水の海洋放出に抗議して、たくさんの中国人がわざわざ福島に嫌がらせの国際電話をかけたことでも分かる。

しかし、彼らは自分の目の前で起きる食用油汚染や毒ミルクなどの食の安全事件は知らないふりをする。仮に自分が被害者になっても、権力者にひざまずいてお願いしかできない。この政権にしてこの人民あり。日本や日本人に八つ当たりするのは、抑圧の反動にほかならない。

ポイント

化工、纯正食用油 化学工業(製品)、混ぜ物のない食用オイル

柏楊 1920年、中国・河南省生まれ。大陸が共産党に制圧された後、台湾へ。教師や夕刊紙の副編集長などを経て作家・コラムニストとして活動を始める。『醜陋的中国人(醜い中国人)』で、中国の文化を「酱缸文化(タコツボ文化)」と評し、その閉鎖性を批判した。2008年没。

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プロフィール

風刺画で読み解く中国の現実

<辣椒(ラージャオ、王立銘)>
風刺マンガ家。1973年、下放政策で上海から新疆ウイグル自治区に送られた両親の下に生まれた。文革終了後に上海に戻り、進学してデザインを学ぶ。09年からネットで辛辣な風刺マンガを発表して大人気に。14年8月、妻とともに商用で日本を訪れていたところ共産党機関紙系メディアの批判が始まり、身の危険を感じて帰国を断念。以後、日本で事実上の亡命生活を送った。17年5月にアメリカに移住。

<トウガラシ>
作家·翻訳者·コラムニスト。ホテル管理、国際貿易の仕事を経てフリーランスへ。コラムを書きながら翻訳と著書も執筆中。

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

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