コラム

戦争に翻弄された写真家が、戦争に翻弄される人々を撮る

2018年09月10日(月)16時00分

From ZALMAÏ @zalmai

<「魔法的な光に満ち溢れていた」アフガニスタンで生まれ、難民としてスイスに渡り、写真家になったザーマイ。彼の作品には運命的な定めのようなものまで絡みついている>

時代に残る写真家の多くは、しばしば作品に自らのアイデンティティがまとわりついている。加えて、運命的な定めのようなものまで絡みついている場合もある。今回紹介するドキュメンタリー写真家、ザーマイもそうした1人だ。アフガニスタンとスイスの2つの国籍を持つ54歳の写真家である。

ザーマイは、14歳から写真に夢中になり、将来は写真家になることを夢見ていた。彼自身が「魔法的な光に満ち溢れていた」と形容する生まれ故郷、アフガニスタンの首都カブールで。

だが、その後すぐ、1979年にはソ連軍がアフガニスタンに侵攻する。本格的な戦争が始まり、翌1980年、16歳のときに彼はスイスに難民として亡命することになる。

この出来事は、言うまでもなく、彼の人生と後の写真家としてのあり方に大きな影響を与えた。地球に存在する悲劇、とりわけ戦争に翻弄される人々の悲劇に焦点を当て続けていくことになったのである。

被写体の多くは難民だ。アフガニスタンの国内避難民や、ここ数年膨大な数でEUに流出している難民たちである。ザーマイ自身の経験と、ヨーロッパの第2次世界大戦の史実――歴史的にはつい最近のことだ――も含め、難民になることは誰にでも起こり得ることだ、と彼は語る。

写真に関して言えば、どこか二律背反的な感覚が漂っている。古典的な手法で光と構図を巧みに操っているかと思えば、意図的にかシャープさを欠いたストレートで素朴な写真も多用している。とりわけ、彼にとって日記的な要素が強いインスタグラムでは、その傾向が強い。ちなみに彼のウェブサイトは、 www.zalmai.comである。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、米が中印関係改善を妨害と非難

ワールド

中国、TikTok売却でバランスの取れた解決策望む

ビジネス

SOMPO、農業総合研究所にTOB 1株767円で

ワールド

中国、米国の台湾への武器売却を批判 「戦争の脅威加
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story