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山本雅也×世界のトビラを開けよう!

2013年07月11日
旅的に生きる。想像を越えるモノを出会うこと。

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旅の醍醐味は、想像を越える出来事に出会えること。
ハプニング、見たことのない光景、偶然の出会い、初めての味。などなど。ファンタスティックな裏切りを無意識に求めて、人は旅に出るのだと思います。瞳孔が開く。腰を抜かす。アゴが外れる。身体までガッツリ驚いてしまう、そんな前向きな事故に巻き込まれてみたいものです。

学生時代に訪れたチベット自治区、ひょんな出会いからある僧に誘われ、崖の上の庵におじゃました時のこと。簡素な部屋に、メインインテリアのごとく鎮座していたのは、まさかの初期型ゲームボーイ。「俺、テトリスまじ上手いんだよね。」と得意気に自慢する僧のドヤ顔は、今でも忘れられません。

マーケティングの最適化によって、いつだって僕らは"僕らの好むもの"をオススメされる環境に身を置かされています。過去のあらゆる履歴が、未来へと新陳代謝したい自分をいつまでも過去に引っ張りこむような感覚を覚えるのです。FacebookのバナーやAmazonのリコメンド、ターゲティングされた車内吊り広告までが、今日を昨日に近付けて、唐突な未知のモノを遠ざけてしまいます。言うなれば、昨日の自分が明日に待ち伏せている状態、もはや自分にストーキングされていると言っても過言ではありません。

故・岡本太郎氏は、「昨日までの自分を蹴っ飛ばせ!」と言いましたが、自分にストーカーされている僕たちにとっては、その言葉に新たな解釈を与えることが出来そうな時代に差し掛かっていることを実感するのです。履歴からのリコメンドから距離を置き、予想を上回る出来事に出会う確率を上げる、そんなワクワクとした旅的な感覚を養いたいものです。

というわけで、今回は旅の途中で遭遇した予想の斜め上をいく観光資源を紹介したいと思います。このアイデアは無かった!という見事な例。先月まで滞在していたフィリピンのセブ島で出くわしました、「囚人のダンス」です。

最もダンスが上手かった2人。近くで見ると意外と幼い。

最もダンスが上手かった2人。近くで見ると意外と幼い。

セブ島にある刑務所では、毎月第4土曜日に観光客向けに囚人によるダンスを一般公開しています。500人を越える囚人たちが一斉に踊り始める様子は圧巻です。一部の囚人は、本当にダンスが上手い。仕込みかと思うほどです。マイケル・ジャクソン、ジャスティン・ビーバー、PSYなどのご陽気な名曲に乗せて、囚人たちが踊るのです。最近では、このパフォーマンスを見るためにセブ島を訪れる旅行者も増えているとか。

一斉に踊りだす瞬間は圧巻。黒Tシャツの囚人が一軍。

一斉に踊りだす瞬間は圧巻。黒Tシャツの囚人が一軍。

女性の受刑者もいて、なんだかみなさん凄く楽しそう。どの囚人も驚くほど人が良く、とても何か罪を犯したとは思えない。と思いきや、フィリピン人の友人に聞いたところ、どうやら窃盗、レイプ、殺人まで、あらゆるタイプの犯罪者がいるらしいです。そんな極悪犯が笑顔で規律を守るようになるわけですから、更生プログラムとしてのダンスは、その威力絶大のよう。

CEBU TVという地元のテレビ局からも取材が入る。

CEBU TVという地元のテレビ局からも取材が入る。

ダンスを観光客向けに公開してみるのはどうだろう?と言い出したのは誰なのでしょう。パフォーマンス後、囚人と一緒に写真を撮れるようにしたら更にいいのでは?よし!とりあえずやってみよう!この際、おみやげにTシャツも売ろう!とGOサインを出した茶目っ気のある上司がいたのでしょうか。

きっとそんな感じで始まったのだろうと勝手に妄想が進みます。アイデアの時点では、常識のないただの悪ふざけに聞こえますよね。ストーリー自体が、もはや映画の原作のよう。と思ったら、まさかの映画化!すでにフィリピンでは、この6月から配給がスタートしています。
■「Dance of the Steel Bars(鉄格子のダンス)」

何が観光資源になるのか、コンテンツになるのか。
21世紀は、世界の至る所でファンタスティックな裏切りの芽が出る予感がします。予想外の場所から。予想外の切り口で。

「囚人のダンス」と同様に、人の家の食卓も世界中から注目される日が果たして来るのでしょうか。間違いなく、来るでしょう。いや、来させます。KitchHikeの提案する"食"の新しい価値と楽しみ方が、世界中で芽生えてくることを願っています。
ファンタスティックな"おいしい"裏切りは、家庭の食卓で。
そんな未来を信じて止みません。

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Profile

山本 雅也(やまもと まさや)

1985年東京生まれ
早稲田大学卒業後、2008年に博報堂DYメディアパートナーズ入社。
雑誌局出版ビジネス部に所属し、出版社の持つあらゆるプロパティを活用した、新規ビジネス開発やクライアントソリューションの提案を行う。
2011年10月より、ソリューションデザイン局ソーシャルメディアマーケティング部 (現iメディア局ソーシャルメディアマーケティング部)に複属し、出版社のプロパ ティとソーシャルメディアを連携させた企画・ビジネススキームを考案。
2012年12月に博報堂DYメディアパートナーズを退社し、KitchHike共同創業者となる。

KitchHikeとは?

世界中の食卓で料理を提供したい人(COOK)とその料理を食べたい人(HIKER)をマッチングさせるオンラインプラットフォーム。
現在、日本/韓国/中国/タイ/マレーシア/フィリピン/インドネシア/トルコ/フランス/インド/アメリカなど、世界11カ国80の食卓が登録されています。(2013年6月20日時点)

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