コラム

英高裁が「難民ホテル」の使用差し止め認める...宿泊施設の不足で3万人以上の難民申請者に影響

2025年08月22日(金)17時46分
イギリスの難民ホテルに差し止め判決

エッピングで行われた反難民デモ(8月8日) Jaimi Joy-Reuters

<王立裁判所はイングランド南東部のホテルに滞在する難民申請者約140人の退去を命令。難民申請者の宿泊施設として使うのは用途変更で事前の許可が必要だとした>

[ロンドン発]英イングランド南東部エセックス州のエッピング・フォレスト地方議会はホテルが本来の用途ではなく「難民申請者の宿泊施設」に使われるのは用途変更に当たり事前の許可を得なかったのは違法としてホテル側に「難民ホテル」としての使用差し止めを求めた。

このホテルに滞在する難民申請者が14歳少女への性的暴行罪で起訴され、数千人に広がる住民の抗議運動に発展。8月19日、王立裁判所(高裁)は地方議会の差し止め請求を認め、9月12日午後4時までにホテルに滞在する難民申請者約140人を退去させるよう命じた。

「ホテル用途」とされる建物を、旅行客を止めない共同宿泊所として使うのは用途変更に当たり、騒音や治安リスク、社会不安、大規模な近隣住民の抗議活動を引き起こしていると地方議会が裁判に訴えていた。王立裁判所は共同宿泊所として使われていたことを認定した。

「差し止めは難民政策を混乱させる」

英内務省は「差し止めは英国全体の難民政策を混乱させる。『難民ホテル』以外の宿泊施設が不足している」と弁明している。ホテルの運営会社は上訴を検討しており、最終の司法判断は秋に持ち越される可能性がある。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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