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BBCはどうして、ハマスを「テロリスト」と呼ばないのか? 「大英帝国」が送る複雑な視線
パレスチナへの連帯を示す人々のデモ(ロンドン、10月28日) Susannah Ireland-Reuters
<英国での世論はイスラエル支持21%、パレスチナ支持17%と分裂。複雑に絡み合うパレスチナ問題をイギリスはどう見ているか>
[ロンドン発]イスラエルとパレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム武装組織ハマスの戦争が英国の世論を分断している。英世論調査会社ユーガブが10月16日に英国の成人2547人を対象にイスラエルとパレスチナのどちらを支持するかと尋ねたところ、イスラエル21%、パレスチナ17%、両方を平等に支持29%、分からない33%と分かれた。
女性のイスラエル支持は15%と男性の28%に比べて低い一方で、パレスチナ支持では男性17%、女性16%、両方を平等に支持は男性30%、女性28%と大差はなかった。政党別では与党・保守党支持者はイスラエル39%なのに対しパレスチナ6%と低く、両方は27%。最大野党・労働党支持者ではイスラエル支持9%、パレスチナ支持27%、両方35%だった。
年齢別では高齢者ほどイスラエルを、若者はパレスチナを支持している。欧州連合(EU)離脱派はイスラエル(35%)を、残留派はパレスチナ(21%)や両方(40%)を支持する傾向が見られる。イスラエル・パレスチナ紛争はユダヤ人国家を建設するシオニズムとナチスのユダヤ人大虐殺、アラブ民族主義が複雑に絡み合うだけに解決するのは容易ではない。
ハマスがユダヤ人1400人を殺害し、少なくとも239人を人質に取ったことでイスラエルは自衛権を発動し、ガザ空爆で8000人以上のパレスチナ人を殺害(ハマスの運営するガザ保健省発表)した。ハマスはイスラエルの過剰防衛でパレスチナ人の犠牲が拡大するのを想定して、これまでにはない規模のテロを仕掛けた。紛争を拡大させる意図が透けて見える。
BBC「われわれの仕事は視聴者に事実を提示すること」
英国政府はハマスを「武装イスラム主義運動」と位置づけ「テロを行っている」と認定する。しかし英BBC放送が頑なにハマスを「テロリスト」と呼ばないことについて保守党政治家や保守系大衆紙デーリー・メール、一部市民の攻撃にさらされている。その理由についてBBCは「われわれの仕事は視聴者に事実を提示し、彼らに判断してもらうことだ」と説明する。
数々の歴史的スクープをものにしてきたBBCのジョン・シンプソン国際問題編集長は「テロという言葉は道徳的に好ましくない組織に対して使われる。誰を支持し、誰を非難すべきか、つまり誰が善人で誰が悪人なのかを人々に伝えるのはBBCの仕事ではない」という。第二次大戦中、BBCはナチスを「敵」と呼んでも「悪」「邪悪」とは呼ばなかった。