コラム

クリミア軍用空港「攻撃成功」の真相──これで「戦局」は完全に逆転した

2022年08月13日(土)13時30分

精密誘導弾による空爆に匹敵する破壊力を持つM142高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」(射程80キロメートル)計16両や目標地域上空を徘徊して目標に突入し自爆攻撃を行う「神風ドローン(無人航空機)」と呼ばれる徘徊型兵器フェニックス・ゴースト計700機などのドローンが米国から供与され、戦局を完全に逆転させた。

無限軌道のMLRSを6輪駆動に改造したハイマースはより素早く移動できる。バイデン氏はロシアとの核戦争を回避するためハイマースでロシア領土を攻撃しないことをウクライナに誓わせた。11月に米中間選挙を控えるバイデン氏はしかし「エスカレーション・リスク」を背負って、ウクライナ軍に圧倒的に不利な大砲を使った消耗戦を打開しようと決断した。

クリミア半島やベラルーシの軍用空港も攻撃

ノルウェーとドイツもMLRSを3両ずつウクライナに供与している。ハイマースやMLRSがウクライナに到着してから戦局は完全に逆転した。筆者が作成したタイムラインを見ると、それが手に取るようにご理解頂けると思う。

6月23日
ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防相が「ハイマースが米国から到着」とツイート。同月25日から実戦配備。

6月29日
ウクライナ軍が黒海西部のズミイヌイ(蛇)島を奪還。ウクライナ軍は米国が供与した地上配備型対艦ミサイルシステム「ハープーン」でロシア軍の補給艦を攻撃。

7月15日
レズニコウ国防相が「初のMLRSが到着。戦場でハイマースの良き友になる。敵に慈悲は与えない」とツイート。提供国は明らかにせず。

7月19日
ウクライナ軍が南部ヘルソン州でドニプロ川のアントニフスキー橋を攻撃。ロシア軍は2月、この橋を通ってクリミア半島からヘルソン州に侵攻。ロシア軍の重要な補給路。

7月23日
ウクライナ軍がヘルソン州でドニプロ川の支流であるインフレット川のダリョフスキー橋を攻撃。

7月24日
ウクライナ軍がヘルソン州でカホフカ水力発電所ダムの橋を攻撃。

7月25日
レズニコウ国防相がウクライナ国営メディアに「ハイマースで50カ所のロシア軍の弾薬庫を破壊した。ロシア軍の兵站を遮断し、ウクライナ軍に激しい砲撃を加える能力を奪うものだ」と発言。ヘルソンにおけるウクライナ軍の反撃強まる。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

欧米の開発援助削減、30年までに2260万人死亡の

ワールド

米、尖閣諸島を含め日本の防衛に全面的にコミット=駐

ビジネス

インド10月貿易赤字、過去最高の416.8億ドル 

ビジネス

原油先物が下落、ロシアが主要港で石油積み込み再開
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国か
  • 3
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地「芦屋・六麓荘」でいま何が起こっているか
  • 4
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    山本由伸が変えた「常識」──メジャーを揺るがせた235…
  • 7
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 8
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    経営・管理ビザの値上げで、中国人の「日本夢」が消…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 9
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 10
    ヒトの脳に似た構造を持つ「全身が脳」の海洋生物...…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story